離婚をするけれど、子どもの親権だけは絶対に渡したくないと思っていても、そもそも子どもの親権をとりたいけれど、どんな基準で決定されるのでしょうか?
離婚するときに夫婦の間に未成年の子どもがいたら、親権者を決定する必要があります。
ところがそのとき、夫婦のどちらも親権者になることを希望してトラブルになってしまうケースがとても多いです。子どもの親権をとるためには、さまざまな注意や対策が必要となります。
また、相手と話合いをしても合意できなきなかったり、勝手に親権者を記入して離婚届を出してしまったりする不安もたくさんあるでしょう。
今回は、確実に親権を得たいと考えているあなたに向けて、親権者を決定する基準や父や母が子どもの親権をとる方法、手順を説明していきます。
目次
そもそも親権ってどんな権利?
離婚するときに小さい子どもがいたら「親権者になりたい」「相手には子どもを渡したくない」と考える方が多いです。
そもそも「親権」とはどのような権利なのでしょうか?
親権は「財産管理権」と「身上監護権」からできている
親権は、子どもの「財産管理権」と「身上監護権」が合わさった権利です。
財産管理権とは子どもの財産を管理する権利で、たとえば子ども名義の預貯金口座を作って入出金を管理したり子ども名義の積立金を行ったりするときには、親権者が対応する必要があります。
また、身上監護権とは、実際に子どもと一緒に住んで子どもの監護をする権利で、通常「親権」という場合、これらの財産管理権と身上監護権の両方を含みます。
親権者と監護権者を分けることも可能
ただし「親権者」と「監護者」を分けることも可能です。
どちらが親権者になるかで意見が対立したとき、父親が親権者となって母親が監護者となるケースが多いです。
この場合には親権者である父親は子どもの財産管理のみを行い、監護者である母親が実際に子どもと一緒に住んで身上監護を行います。
戸籍上の子どもの「親権者」は、子どもと別居している「親権者」となった方の親(父親)となります。
親権者の判断基準は?
離婚後、子どもの親権者は父か母のどちらかとなります。
日本では、離婚後の「共同親権」が認められていないからです。
父親も母親も両方とも親権者を希望するときには、どのような基準によって親権者を決めれば良いのでしょうか?
親権者を決定するときに考慮される要素
家庭裁判所が親権者を決定するときには、以下のような要素を考慮して判断しています。
養育実績
これまでの養育実績が高い方が親権者になりやすいです。たとえばミルクをあげたりおむつを替えたり食事の介助、お風呂の世話をしたりなど、主として育児をしてきた人です。
子どもとの関係
現在の子どもとの関係が良好な場合、親権者になりやすいです。子どもと疎遠にしている父親などは不利になることが多いです。
子どもの愛着
子どもが親にどのくらい愛着を持っているかも評価の対象になります。子どもと親との試行的な面会を行って親子関係を観察するケースなどもあります。
子どもの年齢
子どもの年齢は親権者決定に対して重要な要素です。15歳以上になると、子どもの意思で親権者を決定できます。
14歳以下であってもおおむね10歳を超えてくると、子どもの意思が尊重されるようになります。
乳幼児の場合、母親優先
子どもが0~4歳くらいの乳幼児の場合には、母親が圧倒的に有利です。このくらいの年齢の子どもが健全に成長するには「母親の愛情」が必要と考えられているためです。
現状維持
離婚時に子どもが落ち着いて暮らしているならば、その現状を尊重することが多いです。つまり離婚時に子どもと同居して生活していたら、そのまま親権者になれる可能性が高いことになります。
兄弟を分けない
子どもに兄弟姉妹がいる場合、それぞれの親権者は分けずに同じ親とします。
たとえば「兄は父親、妹は母親」などとはしません。ただしこれは裁判所の考え方であり、親同士が話し合って親権者を決めるときには、別々にすることも可能です。
経済力
経済力は高い方が親権者になりやすいです。ただし絶対的ではなく、生活保護の母親などでも親権者になることは可能です。
健康状態
健康状態も親権者になるために重要です。ただ、養育が不可能なほどの状態でなければ、うつ病や身体障害などがあっても親権者になれます。
住環境
住環境も判断の一要素となります。できれば閑静な住宅街で校区も良いところ、広い家の方が良いでしょう。ただし絶対的な基準ではなく、住居が賃貸アパートなどでも親権者になることは可能です。
面会交流への考え方
離婚後、相手との面会交流をどこまで認めるかという考え方です。家庭裁判所は、できるだけ面会を積極的に行うべきと考えているので、面会交流を積極的に認めるスタンスの人の方が親権者になりやすいです。
母親優先の原則について
子どもの親権者になりたいのであれば「母親優先の原則」について知っておくべきです。子どもが乳幼児の場合においては、母親が絶対的に親権者として有利になることです。
そこで赤ちゃんの親権を争っている場合には、たとえ父親が赤ちゃんを引き取って育てていても、母親が争えば母親に親権を取られてしまうことが多いです。
母親の立場であれば、子どもが乳幼児の間に早く離婚してしまえば親権者になりやすいことになります。
父親の立場であれば、子どもが乳幼児の間に離婚すると不利なので、しばらく待って子どもが成長してから離婚した方が有利になりやすいということです。
現状の維持
親権者を決めるとき「現状が維持される」ことにも注意が必要です。
つまり離婚時に子どもが今の環境で落ち着いて生活していたら、あえて変更する必要がないと考えられるのです。
子どもは離婚問題でただでさえ傷ついているので、それ以上に転校や引越などのストレスをかけるべきではない、という考え方です。
そこで、子どもの親権をとりたいのであれば、離婚の際に子どもと離れないことが重要です。自分が家を出るなら子どもを連れて出ること、相手が出ていくなら子どもを連れて行かれないように注意しましょう。
浮気をしていると、離婚したら親権をとれないの?
「浮気していると、親権をとれないのか?」という疑問を持たれる方も多いです。
結論的には、浮気していても子どもの親権を獲得できます。
浮気して離婚原因を作った妻に親権が認められている事例も数多く存在します。
ただ、浮気していると不利になることは事実です。
また浮気相手と別れずに、離婚前に子どもと浮気相手を会わせているようなケースでは、親権者として不適切であると判断されやすいです。
相手の浮気によって離婚するのであれば、相手が浮気相手と別れておらず反省していないこと、このまま親権を認めると、子どもにとって悪影響が大きいことなどを指摘すると良いでしょう。
子どもの意思と親権はどれくらい関係するの?
親権者を決めるとき「子どもの意思はどのくらい尊重されるの?」と疑問を持たれる方も多いです。
子どもが10歳未満の場合には、あまり子どもの意思は尊重されません。子どもには十分な判断能力がないと考えられる空です。10歳を超えると、子どもの言い分もある程度聞いてもらえるようになります。
15歳以上になると、子どもが自分の意思で親権者を決定できます。
子どもが大きくなるにつれて、だんだんと子どもの意思が尊重されるようになるということです。
父親が親権を勝ち取るために必要なこと
以下では、父親が子どもの親権を勝ち取るために必要なことをご紹介していきます。
子どもと離れない
まずは、絶対に子どもと離れないことが重要です。裁判所は子どもの親権者について「現状を維持」する傾向が強いです。離婚時に子どもが母親と一緒に暮らしていて落ち着いて生活していたら、父親にはまず親権が認められません。
離婚の際には、妻が子どもを連れて家を出てしまうケースが非常に多いです。それを阻止するために、早期に妻だけに出ていってもらうか、自分が子どもと一緒に家を出るか、「お互いに勝手に子どもを連れて出ない」という書面による約束をするなどの対応をしておくべきです。
子どもと一緒に過ごす時間を作る
父親が親権を撮るためには、子どもとのコミュニケーションが重要です。子どもと一緒に過ごす時間がほとんどないのに「親権者になりたい」と言っても説得力がなく、否定されるケースが多いからです。
仕事が忙しい人は少し時短にしたり、休日は子どもとしっかり一緒に過ごして習い事や宿題を見てあげたり一緒に外に遊びに行ったりして、子どもとの信頼関係を構築しましょう。
監護補助者について
子どもが小学生などで小さい場合、親が家でみてあげることが必要です。しかし父親は外で働いているので、日中子どもの面倒をみてくれる人がいません。
それでは親権者として認められにくいので「監護補助者」を準備しましょう。
監護補助者とは、子どもの世話を手伝ってくれる人です。
具体的には、夫の母親(子どもの祖母)に同居してもらって子どもの面倒を見てもらう方が多いです。
もちろん監護補助者任せにして自分が関与しないというのでは親権が認められませんが、できるだけ有利になりたいならば、母親や姉、妹など誰か手伝ってくれる人を探しましょう。実家に帰るのも1つの方法です。
母親が親権を勝ち取るために必要なこと
母親が親権を勝ち取るには、以下のようなことを心がけましょう。
子どもと離れない
父親と同様に「子どもと離れない」ことが重要です。現状維持の原則は母親が親権者になる場合にも適用されるからです。
離婚時に子どもが夫と生活していたら、母親であっても親権を取れない可能性が高くなります。
家を出るときには、どんなに急いでいても必ず子どもを連れて出ましょう。「母親だから、後で子どもを取り戻せる」と思って一人で出ると、一生取り返せなくなる可能性があります。
子どもとの関係を密にする
子どもとの関係を密にすることも重要です。専業主婦などの方はもともと密であることが多いですが、フルタイムで働いている方などの場合、一緒に過ごす時間が少なかったりあまり子どもを構えていなかったりすることもあります。すると親権をとりにくくなります。
子どもと話をする時間、一緒に料理をしたり遊んだりする時間を増やして信頼関係を構築しましょう。
育児に関する資料を用意する
母親が親権をとりたい場合、これまでの育児に関する資料をできるだけたくさん集めましょう。たとえば母子手帳や育児日記、幼稚園や保育園の連絡帳、学校の先生とのやり取りなど、母親が保管しているものは父親よりたくさんあるケースが多いです。このようなものを多く提出すると、家庭裁判所も評価してくれます。
親権を取れないよくある理由
親権者になれない人のよくあるパターンを知っておきましょう。
お金があるから親権を取れると思い込む
よくあるのは、「お金があるから親権を取れる」と思い込んでいるパターンです。特に父親に多いです。
「妻に経済力がなく、子どもを妻に渡せば満足に教育も受けられないし困窮することがわかっているので、裁判所は妻に親権を認めないだろう」と考えます。
しかし、裁判所は経済力をさほど重視していません。
経済力がなくても、夫からの養育費や行政からの支給で生活を維持できて子どもを養育できる、と考えているのです。生活保護の母親でも親権者になれます。
自分に経済力があるからと言って軽く考えて対策をとっていないと、相手に親権をとられてしまいます。
子どもを放置・虐待している
子どもを放置していたり虐待していたりする実績があると、親権者としては不適格となります。
ただし、しつけの一環でたたいて1回だけけがをさせたという程度であれば、親権者になれる可能性があります。
子どもと一緒に過ごせない
これも父親によくあるパターンですが、子どもと一緒に過ごす時間がないのに、親権を取りたいと言っても認められません。
仕事が忙しく出張や多い場合、土日出勤がある場合、毎晩帰る時間が遅い場合などには子どもとのコミュニケーションをとりづらいので親権者を否定されやすいです。
子どもと別居している
子どもと別居している場合には、圧倒的に不利になります。
父親であっても母親であっても、親権者になりたいのであれば、子どもと離れないことが重要です。
赤ちゃんの親権を父親がとろうとする
子どもが乳幼児の場合、父親が親権を取ろうとしても困難です。子どもが小さいときに父親が親権を取りたいのであれば、子どもがある程度大きくなって学童期に入るまで待った方が良いです。
親権者を決定するための手順
親権者を決定するには、以下のような手順で進めましょう。
1.まずは話合いを…
まずは、夫婦間で話合いをします。話合いによってどちらかを親権者にすることに合意できれば、協議離婚届に記入することによって、法的な親権者が決まります。
離婚後の戸籍には、協議離婚届に書かれた親権者が「親権者」として記載されます。
ただし、妻が親権者となる場合、子どもは夫の戸籍内に残ったままとなり、苗字も夫のままです。妻が子どもを自分の戸籍に入れて姓を揃えるには家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」をする必要があります。
2.離婚調停
自分達で話し合っても子どもの親権者を決められない場合には、家庭裁判所で「離婚調停(夫婦関係調整調停)」をすることにより、親権者を決める必要があります。
調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って夫婦の話合いを調整してくれます。相手と直接顔を合わせる必要もないので、感情的になりにくくストレスも軽減しながら話合いができます。
調停で合意できたら、家庭裁判所で「調停調書」が作成されます。それを市町村役場に持参して離婚届を提出すれば、親権者を定めて離婚できます。
ただし、調停はあくまで話合いなので、お互いがどうしても譲らなければ、調停は不成立となり終了します。
3.離婚訴訟
調停でも解決できなかった場合には、離婚訴訟によって親権者を決めるしかありません。
離婚訴訟では、調査官に子どもの親権者についての調査を実施させた上で、裁判官が調査結果をもとに親権者を決定します。
このときには、上記で紹介したような親権者の判断基準をもとに決定されます。
判決が出ると「判決書」が送られてきます。それと「確定証明書」という書類を市町村役場に持参すると、親権者を定めて離婚届を提出できます。
重要な「調査官調査」とは
家庭裁判所で親権を認めてもらうには「調査官調査」への対応が非常に重要です。
裁判官は、調査官による意見をもとに親権者を決めるからです。
多くのケースで、調査官が「父親がふさわしい」と意見すればそのまま父親に親権が認められますし「母親がふさわしい」という意見であれば母親に親権が認められます。
調査官調査の際には、最低限時間を守り、身なりを整えて挨拶をきちんとするなど社会的なマナーを守ること、これまでの養育実績をしっかり示して今後の養育方針などをきちんと語ること、子どもとの良好な関係を見せることなどが重要です。
まとめ
離婚後にどちらの親の元で育つことになるかは、子どもの一生に関わる問題です。相手が浮気しているなら、相手に親権を渡すべきではありません。今回の記事を参考に、親権を勝ち取って下さい。