先祖の調査は自分でできる!具体的な3つの方法と戸籍の見方とは

「自分のルーツはどこにあるのだろうか?」「自分の先祖はどんな人で、どんな時代を生きていたのか?」人生の様々な岐路で、自分の祖先について思いを馳せる人は少なくありません。

そこでこの記事では、先祖の調査を自分で行う方法を具体的に紹介していきます。

自分のルーツを知ることは、歴史を身近に感じることができる貴重な体験の一つです。この記事を通して、ぜひ今いる自分の起源を知っていきましょう。

この記事を読んでわかること
  • 自分で先祖調査はおこなえるか?
  • 自分で行う具体的な3つの先祖調査方法
  • 先祖調査で知っておきたい5つの知識

先祖の調査は自分で行えるの?

先祖の調査はある程度であれば自分で調べることが可能です。一般的に自分で行う先祖調査は、以下の3つに分けられます。

  • 戸籍を辿っていく
  • 過去帳を調べる
  • 古文書・書付・郷土史などを調べる

初めての先祖調査の場合は、不慣れなことも多いため、「自分の苗字のルーツを知りたいから父方の祖先を辿っていこう」「母のルーツが知りたいから、母方を遡っていこう」などある程度範囲を決めましょう。

また戸籍や過去帳では祖先の具体的な氏名や没年月日などを調査できますが、時代背景やその当時の様子を知ることはできません。

そのためその年代の詳しい歴史を知るためには、歴史書やその地方の様子を綴った郷土史などに目を通すことで、祖先の生きた時代や息遣いを感じていきましょう。

戸籍を辿って先祖調査行う

先祖を調査する最も確実な方法が、戸籍を遡ることで行う戸籍調査です。戸籍は本人の本籍地に保管されており、

  • 本人
  • 配偶者
  • 直系親族
  • 上記の人物の委任状を持つ者

であれば戸籍謄本の写しを取得することができます。

このため先祖調査の場合は、自分→父母→祖父母→曾祖父母というように順に戸籍を辿っていくことで調査を行っていきます。

ただ先祖の調査の場合は、例えば父の兄弟(本人から見て叔父、叔母など)といった関係は傍系となり、直系ではないためあなた自身だけでは、戸籍謄本の取得をすることができません。

このため傍系についても調べたい場合は、傍系にあたる親族から委任状をもらうなどの方法を考えてみましょう。

①まずは自分の戸籍謄本を取ってみよう

先祖調査の最初の一歩として自分の戸籍謄本を取得してみましょう。戸籍謄本は本籍地のみで取得できるため、自分の本籍地のある役場で直接申請するか、本籍地が遠方の場合は郵送で申請することもできます。

またこの他にも、コンビニ対応している自治体ではマイナンバーカードがあればコンビニで簡単に戸籍謄本が取得できる場合もあります。

戸籍謄本は、本籍地の市区町村でしか取得できませんが、引っ越しなどを繰り返していて、そもそも自分の本籍地が分からない場合は、現在住んでいる地域で「本籍地記載の住民票」を取得することで自分の本籍地を知ることができます。

②「身分事項」と「戸籍事項」の欄を見てみよう

実際に自分の戸籍を取得できたら、次は一つ前の代にさかのぼるために「身分事項」か「戸籍事項」という項目の「従前戸籍」の欄を見ていきましょう。

「戸籍事項」とは、転籍、戸籍の改製、削除、など戸籍が変更された事由について、変更された日や変更理由が記載されています。

「身分事項」とは、出生、婚姻、離婚、縁組、死亡などの個人の身分変動の事で、例えば生まれた日や結婚した日など本人の身分に変動があった日が記載されています。

先祖調査ではこの中でも親の戸籍に遡りたいため、すでに結婚をしている場合は「婚姻」の中の「従前戸籍」の欄を見てみましょう。「従前戸籍」の欄で筆頭者が自分ではなく、父か母になっていたらその「従前戸籍」が父母の本籍地ということになります。

また独身で、すでに親の戸籍から抜け転籍を行っている場合は「戸籍事項」の中に、「転籍」という部分がありここに「従前戸籍」が記載されているため、その記載の筆頭者が父・母である場合はその住所が父母の本籍地となります。

つまり自分の戸籍謄本を取った際は、どこかに記載のある「従前戸籍」を見ることで、次はどの市区町村に戸籍謄本を申請すればいいのか分かることになります。

③戸籍の様式が変わっても、同じことを繰り返そう

自分の戸籍を取得できたら、次は「従前戸籍」の筆頭者と住所を見て、父母の戸籍を取得してみましょう。ただし、父母や祖父母の戸籍を取り寄せてみると、現在の横書きの戸籍ではなく、どこかのタイミングで必ず縦書きの戸籍がでてくることになります。

この場合も現在の戸籍と同様に、「身分事項」や「戸籍事項」の欄を見ていくのですが、この頃の戸籍には「身分事項」「戸籍事項」という記載はありません。このため縦書き戸籍が出てきた場合は、父方の戸籍を辿りたい場合は図を参考に

  • 昭和伍拾弐年弐月参日佐藤桜子と婚姻届出愛知県名古屋市西区山本町一丁目三番地  田中一郎から入籍

の欄の赤字分が、祖父の名前(筆頭者)と本籍地ということになります。

戸籍の様式が変わってしまうと、どの部分を見ていいかわからなくなりがちですが、必ずどこかの部分に、その戸籍の一つ前の戸籍があった場所(従前戸籍)と、その本籍時の筆頭者(戸主)が記載されているため、同じ手順を繰り返して祖父から曾祖父母へさらにその前の先祖へと戸籍を辿っていきましょう。


このように、戸籍を辿って先祖の調査を行う場合は、直系親族であれば、「身分事項」や「戸籍事項」の「従前戸籍」を一つ一つ辿ることで、詳しい家系図を制作することができます。

ただ現在の戸籍はわかりやすく記載されていますが、戸籍を遡るほど、見慣れない漢字や字体に出くわしたり、さらにさかのぼっていくとそもそも現在では存在しない地名が書かれているなど、慣れない人が読むと理解しにくいと感じる場面が多々あります。

ですが戸籍は連綿と繋がっているため、わからない部分が多くとも諦めず、一つ一つ読み解きながら調査を行いましょう。

菩提寺の過去帳で先祖調査を行う

先祖調査で一般的な戸籍を辿る方法以外に、菩提寺や仏壇に保管されている過去帳を見ることで先祖調査を行う方法もあります。

そもそも過去帳(過去帖)とは、仏具の一種で個人の俗名(生前の名前)、戒名、没年月日、亡くなった時の年齢などが記載されているものです。過去帳は主に以下の役割をもっています。

  • 覚書
  • 家系図
  • 位牌のまとめ役

過去帳は中に記載されている、命日などを確認することで法要などの覚書としての役割があります。

またこの他にも、一般的に年月が経つほど増えてしまう位牌は三十三回忌や五十回忌の際に位牌に書かれた記録を過去帳に移し、「閉眼供養」を行い位牌を処分することがあります。

過去帳はその際に、位牌のまとめ役としての役割も担っているため、このようにもし過去帳が保管されている家ならば、その内容を見ていくだけで先祖の名前や没年月日などを知ることができるのです。

①まずは自宅や実家で過去帳を探そう

先祖のことを知りたいと思い、過去帳を使って調査する場合は、まずは自宅や実家などの仏壇に保管されていないかを確かめておきましょう。

過去帳は前述したように、法事や長い年月が経てば位牌の代わりとして仏壇の引き出しなどに大切に保管されている場合が多く、ここを探すだけで、自分の先祖について知ることができるかもしれません。

またこうした場所にない場合は、例えば両親の兄弟や祖父母の家などに保管されていることもあるので、自分で連絡が取れる範囲の親族に過去帳を保管していないかを聞いてみましょう。

②自宅に保管されていない場合は菩提寺に聞いてみよう

もし自分の知っている場所で過去帳を発見できない場合は、先祖代々が眠る菩提寺が分かっていれば、その菩提寺の過去帳について住職などに問い合わせるという方法もあります。

現在は個人情報や差別の問題などから、菩提寺であっても一般の人に過去帳自体を見せてくれる寺院はほとんどありません。

このため、菩提寺に過去帳を問い合わせる場合は、自分で調べられるだけ、先祖の名前、没年月日、戒名、などを調べ、「家系図を作りたい」「先祖を知りたい」など具体的な目的を説明したうえで、自分に代わり住職に過去帳の閲覧をお願いし、先祖の情報を探してもらいましょう。

ただ寺院としては、こうしたサービスを一般的に行っていることはほとんどないため、問い合わせて対応してくれるかはその菩提寺により異なります。

また過去帳のそもそもの役割は、主に檀家の管理だったため中には「家」単位で過去帳を記載しておらず、没年月日の順に記載していたり、「〇〇家 長女」「〇〇家 妻」など現在とは異なる分かりにくい書き方で記載している場合もあるため、もし過去帳を調べてもらえたとしても、知りたいことが分かるかは保証がないことも知っておきましょう。


先祖を知るうえで過去帳は、非常に重要な働きをしてくれますが、すでに祖父母の代でこうした継承が失われていることも多いのが現状です。

また以前は菩提寺がわかれば、比較的見せてもらいやすかった過去帳も、個人情報の観点から一般人の閲覧が難しくなりました。しかし過去帳を使って先祖を調べられた場合は、戸籍では難しい傍系の先祖の調査ができる可能性もあるため、諦めずに探すか交渉してみるのもいいかもしれません。

文献を使って先祖調査を行う

最後に自分で行える先祖調査は、文献を調べることで行う調査です。

戸籍調査では、明治19年までしか遡ることはできませんが、文献調査であれば、江戸時代初期や自宅に古文書などがある場合はさらに遡って先祖調査をすることも可能です。

また戸籍で先祖を辿る場合は、そこでわかるのは具体的な先祖の名前と本籍地(ルーツ)だけですが、文献を使った調査であれば、その時代背景や先祖が当時どんな暮らしをしていたかなど、先祖たちの生きた時代を感じることができます。

①まずは自宅や実家にある文献を探そう

文献を使った調査で最初に行うことは、まずは自宅や実家などに保管されている過去の文献・資料・書付がないかをチェックしていきましょう。

実家に蔵など、古いものが保管されている場所があるならばまずはそこを隅々まで調べておきましょう。

またこの時何かを発見した場合は、父母や祖父母などへの聞き込みも忘れず行い、文書だけでなく直接話を聞くことで情報を集めるようにしましょう。

②郷土史を調べよう

次に、先祖が住んでいた地域の県立図書館や地方図書館に行き郷土史がないかを調べていきましょう。

郷土史とは、ある一地方の歴史を調査・研究していく史学観の一つで、日本各地に郷土史研究会が存在し様々な地域の書籍が出版されています。

戸籍などで自分のルーツの場所が分かった場合は、その地方の郷土史を調べることで、「具体的に先祖がどんな暮らしをしていたのか?」「その時代にはその地方にどんな歴史的な事件があったのか?」といった、先祖調査の内容に肉付けを行うことに繋がります。

また例えば珍しい苗字などの場合は、郷土史の中に登場する人物に同様の苗字などが登場していれば、戸籍よりさらに前の祖先を見つけられる可能性もあります。

③その時代の出来事を調べたいなら新聞を探そう

具体的な先祖調査だけでなく、先祖がどのような時代に生き、その時代にはどんなことがあったのか知りたい場合は、該当する時代の新聞に目を通すのも面白い発見があります。

日本最古の紙でできた新聞は東京日日新聞で、明治5年(1872年)旧暦の2月21日に販売されました。またさらにそれより前の木でできた最古の瓦版はなんと1614年~1615年の大坂の陣を記事にしたものも現存しています。

新聞を探す際は地元近くの図書館だけでなく、県立などの地元で一番大きな図書館で探してみましょう。またさらにマイナーな地方紙や地元に存在しない年代の新聞などを探している場合は、国会図書館の利用も検討してみましょう。

ただ国会図書館は東京にしかないため、利用の際はできるだけ短い時間でたくさんのことを調べられるように、「いつの年代の新聞を調べるか?」「どこの新聞を調べるか?」などを決めておくとスムーズに資料集めを行うことができます。


文献を使った調査は、先祖自体を調査することにはあまり繋がりません。しかし、先祖が生きた時代を調べていくことは、ただの文字が並んだ家系図ではなく、その系譜に生きた人たちの息吹を与えてくれます。

そのため、これ以上以前の先祖を調べるのは難しいと感じた時や、先祖調査に行き詰った際にはこうした文献調査に精を出すのも充実した先祖調査を行うのに繋がります。

先祖調査で知っておきたい5つの知識

ここまで自分で行える先祖調査を具体的に説明してきましたが、ここからは先祖調査について知っておきたい5つの知識を紹介していきます。

①まずはどの系統をどのくらい調べたいか決めておく

先祖調査をする場合、まずは「父方の系統を江戸時代まで」や「父・母両方の系統を戸籍で辿れるまで」などある程度どのくらいまで調べるかを決めておくことが大切です。

これは先祖調査は、調べれば調べるほど膨大な情報量になり、ある程度終わりを決めておかないと、延々と作業が続いてしまうためです。

また初めて先祖調査を自分で行う場合は、父方・母方どちらかに絞り行った方が効率的になるため、自分の苗字のルーツを知りたい場合は父方を調べようなど方向性を決めておくことが大切です。

②戸籍は複数取り寄せる必要がある場合も多い

戸籍を使った先祖調査の欄には詳しくは書きませんでしたが、多くの場合1人の人物の戸籍は複数に渡っています。

これは出生時には親の戸籍から始まり、独り立ちした時点で自分の居住地に転籍をしたり、戸籍の改正で自動的に戸籍が新しく作り替えられたり、結婚や離婚で戸籍を新しく作るなど人生の様々なシーンで戸籍に変化が起こるためです。

このため実際に戸籍を取り寄せてみると、すぐに「従前戸籍」の欄に、父母や祖父母など次の世代の名前が出てこないこともあります。

この場合は、慌てることなく取得した戸籍の一つ前に遡ることを続け、筆頭者(戸主)の欄に調べたい人物の名前が出てくるまで一つ一つ丁寧に遡っていきましょう。

③戸籍の用語を知っておく

戸籍取得では耳慣れない用語が多く出てきますが、先祖調査のために以下の用語を知っておきましょう。

  • 戸籍謄本(こせきとうほん)・・・別名「全部事項証明」と呼び、戸籍に記載されている全員分の身分事項を証明するものです。先祖調査では、この謄本を取得していくことになります。
  • 戸籍抄本(こせきしょうほん)・・・別名「個人事項証明」と呼び、戸籍に記載されている中で「自分だけ」「子供だけ」など、一部だけの身分を証明するものです。先祖調査では全員分の関係を見ていくためこちらの取得は行いません。
  • 除籍謄本(じょせきとうほん)・・・除籍謄本とは、離婚・死亡・転籍などで全員が抜けた状態の戸籍のことをさします。先祖調査では、結婚や死亡などで誰もいなくなってしまった除籍謄本を請求する場面が多々あります。
  • 改製原戸籍(かいせいはらこせき)・・・戸籍法が改正された時や、戸籍の様式が変更された時に、新しい戸籍の前の様式で綴られた戸籍です。改正の際にはすでに死亡・離婚・転籍している人は除かれた戸籍が新しく作られるため、関係性や戸籍のつながりを見ていくために申請することになります。

耳慣れない言葉が多く、一度読んだだけではわかりにくいですが、「基本的に戸籍謄本をとればいい」「遡るごとに誰もいなくなった除籍謄本を取る必要がある」「戸籍を遡っていくと、身分の変更はなくても様式が変わったため原戸籍を請求する場面もある」とおさえておけばいいでしょう。

④戸籍で調べられるのは明治19年まで

戸籍を使えばいくらでも先祖を遡れるように感じられますが、戸籍が初めて作られたのは明治5年で、現在ではこの年に作られた戸籍は「壬申戸籍」と呼ばれ封印され、私たちが閲覧することはできません。

このため私たちが取得できる最古の戸籍は、明治19年(1886年)に作られた「明治19年式戸籍」となり、戸籍だけで先祖調査を行う場合は、遡れる年数は最大で約150年前までとなります。

ただ誰もが明治19年まで調べられるというわけではなく、戸籍を使った調査で多く用いる「除籍謄本」や「改製原戸籍謄本」は、2010年の法改正以前は保存期間が80年と定められていたため、市区町村の中には保存期限を過ぎたため除籍謄本や原戸籍謄本が破棄されている場合もあります。

法改正が行われ、現在ではこれらの保存期限が150年に延長されていますが、戸籍だけで自分の調べたい先祖まで調べられるかについては、こうした保存期限や最古の戸籍の年号を知っておきましょう。

⑤存在しない地名もある

先祖調査を行っていくと、市区町村の統合などからそもそも現在では存在しない地名が本籍地となっていることがよくあります。

こうした場合はどこの市区町村に、本籍地として戸籍謄本を請求していいかわからなくなってしまいますが、その場合は以下のように対処しましょう。

  • Wikipediaでその住所を調べる
  • 近くの市区町村に問い合わせる

Wikipediaでは、統合された市区町村の変遷が記載されているため、存在しない住所を調べると、統合された経緯から現在の該当する住所を調べることができます。

またもしそれでもわからなかった場合は、現在の住所と照らし合わせて、その地域の市区町村の戸籍係に問い合わせることで、その役場に戸籍が保存されているかを知ることができます。


先祖調査では耳慣れない戸籍の用語や、家督制度など現在では用いられていない考え方があり、初めての調査では不慣れなことが多く発生します。

そのためこうした知識を事前に持っておくと、困った場面に出くわした際にも、焦ることなく対処することができます。

まとめ

先祖調査はどの方法を試したとしても、一つ一つ事実を積み重ね明らかにしていく地道な作業の連続です。

ただその作業を続けることで、自分自身のルーツを発見したり、先祖がどんな時代をどのように生きてきたかを知る壮大な作業とも言えます。

先祖調査では何がどこまでわかるかは、その人それぞれではありますが、こうした時を超えた調査をすることで、自分という人物の起源を知ることができ、その中で新しい価値観が生まれるきっかけになるかもしれません。