モラハラ夫(妻)と離婚する方法|証拠の集め方と知っておきたい5つのポイント

「お前は何をやってもダメだ」「離婚なんてしたらお前はやっていけない」もし日常的にモラハラを受けているなら、離婚を選択肢に入れるのが賢明かもしれません。

そこでこの記事では、モラハラ夫(妻)と離婚するための証拠の集め方と、離婚までの具体的な手順を紹介していきます。モラハラはあなたの心を、ゆっくりと着実に蝕んでいきます。

無気力になることなく、自分に何ができるか?苦しい状態から抜け出すにはどうしたらよいかを考えていきましょう。

この記事を読んでわかること
  • モラハラ証拠の種類と収集方法
  • モラハラ夫(妻)と離婚する手順
  • 離婚する前に知っておきたいこと

これはモラハラ?モラハラ夫(妻)の特徴と行動のチェックリスト

モラハラ夫(妻)との離婚を考える前に、まずは自分が受けている仕打ちはそもそもモラハラなのかを確認していきましょう。以下はモラハラチェックリストです。どのくらい当てはまるかを数えてみましょう。

  1. 家にいるとき、外にいるときの二面性がある
  2. 理想、プライドが高い
  3. 自分は特別な存在という意識が垣間見れる
  4. 自慢話が多い
  5. ちょっとしたことで不機嫌になる(空腹など)
  6. 口先ばかりで行動が伴っていない
  7. パートナーより優位でありたい
  8. パートナーの予定、都合を考えない
  9. 思い通りにいかないと逆上する
  10. パートナーの成功を喜べない
  11. 自分に非があっても、謝れない
  12. パートナーの価値観、考え方、友人を否定する
  13. パートナーを非難する言動が多い
  14. 金銭的な束縛がある

当てはまるものはどのくらいありましたか?当てはまるものが多いほど、あなたの配偶者はモラハラ夫(妻)である可能性があります。

モラハラ夫(妻)と離婚する前に知っておきたい5つのポイント

モラハラ夫(妻)の特徴や行動を知ったところで、次はモラハラ配偶者と離婚するために抑えておきたいポイントを見ていきましょう。

①モラハラでの離婚には証拠が大切

モラハラが原因で離婚する場合は、証拠の確保を必ず行いましょう。

モラハラが原因での離婚は、相手が協議離婚に応じてくれることが少なく、調停離婚や裁判離婚に発展しやすい性質があります。調停離婚や裁判離婚の場合、離婚には「婚姻を継続し難い理由」が必要です。

この際にモラハラの証拠を持っていなければ、スムーズな離婚は行えません。モラハラでの離婚を考えている場合は、必ず客観的な証拠確保を優先しましょう。

②モラハラ加害者との離婚は長期化することが多い

モラハラ加害者との離婚は、長期化する傾向があることを知っておきましょう。

モラハラ加害者は自分自身の人格を保つため、モラハラ被害者に対して依存的な感情を持っています。そのため、離婚は難航することが多くなります。

相手が協議離婚に応じなければ調停離婚になり、それでも決着がつかない場合は裁判離婚に発展するケースもあります。早くモラハラ相手から離れたいとき、なかなか離婚できないのは精神的なストレスがかかります。しかし事前にモラハラでの離婚は難航しやすいということを知ることで、焦らずに対処できるでしょう。

③離婚したいと思っていることを悟られないようにする

モラハラ夫(妻)との離婚を考えている場合、絶対に気持ちを悟られないようにしましょう。

モラハラ加害者は被害者の優位に立つことで、自分自身の心の安寧を手に入れています。そのため、自分の元から相手が逃げだす素振りを見せると、全力で阻止する可能性があります。

日常的にモラハラを受けると、誰でも精神的に激しく消耗してしまいます。そんなとき離婚願望を相手に気づかれ抵抗されれば、最悪の場合離婚しようという気力さえ奪われかねません。

モラハラ相手に離婚したいと気づかれてもいいのは、証拠や弁護士など全ての準備ができてからです。相手と確実に決別するために、慎重な行動を心がけましょう。 

④モラハラの辛さは伝わりくい

モラハラの辛さを伝えるのは、難しいことを知っておきましょう。

どんな言葉が傷つくか、どんな状況で言われたかは、モラハラ夫(妻)とあなた自身にしかわかりません。体験したことを相手に伝えることが難しいからこそ「そんなことで離婚するの?」「もう少し我慢が必要なのでは?」と言われることもあります。

辛さを理解してもらえなければ、「自分が悪いのかも…」「我慢しなくちゃダメなのかな?」と辛い気持ちを押し込めてしまいがちです。

だからこそ、モラハラの辛さを言葉で伝えるのは難しいことを理解し、証拠確保を優先しましょう。客観的な証拠があれば、あなた自身の辛さや現状を理解してもらいやすくなります。モラハラの相談をして、わかってもらえないことに落胆する必要はありません。相手にも理解できる証拠をもって正当な主張を行いましょう。

⑤モラハラは改善することが難しい  

最後にモラハラは改善することが難しい、という事実を知っておきましょう。モラハラの主な原因は下記のように根深いものが多く、そもそも本人自体がモラハラをしている自覚がないことがほとんどです。

  • 幼少期の家庭環境
  • 生まれつきの気質
  • 精神障害・発達障害によるもの
  • 過度なストレス

自覚がないことを注意しても、本人に響くことはありません。もし本人が自覚したとしても、加害者の精神状態を保つためにモラハラをやめることはなかなかできません。

「相手が変わってくれたら」「モラハラさえなければ」と思って離婚を踏みとどまっている場合、モラハラを改善するのはかなり困難であるという現実を理解しておきましょう。


モラハラでの離婚についてみていくと、事前の準備や心構えが重要なことがわかります。モラハラ被害を受けていると、精神的にも身体的にも不調をきたしてしまいがちです。だからこそ明確な気持ちで離婚について考えることが必要といえます。

またモラハラ夫(妻)が離婚になかなか応じてくれない時の対策として、以下の記事も参考にしてください。

モラハラの有用な証拠と収集方法

ここからはモラハラ夫(妻)と離婚するための、有用な証拠と証拠の収集方法についてみていきましょう。

①モラハラの音声・動画

モラハラで最も有用証拠となるのは、具体的な音声や動画です。

一回だけでは日常的にモラハラがあったことを証明しにくいため、できるだけ複数回の証拠を集めるようにしましょう。動画や録音は、編集したと思われないためにも、一部分の録画ではなく全体的な流れがわかるものがより有効です。

ボイスレコーダー購入の際は、以下の点を重視して選びましょう。

  • 人の声をクリアに録音できるもの
  • 録音時間は10時間~15時間程度
  • バレにくいように薄型・軽量型

価格は1万円程度~5万円程度と幅があるため、自分の用途に合ったものを購入しましょう。

録画用のカメラを購入の際は、以下の点を重視して選びましょう。

  • バッテリー容量が多いもの
  • 小型か部屋のデザインに馴染むもの

カメラの中には、時計やペンといった日常に馴染むものも多く、家にあっても不自然にならないものが豊富にあります。価格帯も1万円~5万円程度で、用途に合ったものの購入を検討してみましょう。

新しく購入することが難しい場合は、スマホの録画・録音機能を活用する方法も有効です。ただしスマホでの録音・録画の場合は、録音開始の際の音を消す、画面を伏せるといった相手にバレにくい工夫をしましょう。どの方法を試せるかは人によって異なるため、自分自身にあった手段を選んでください。

音声でも録画でも、相手に気づかれずに証拠を集めることが大前提です。証拠集めの際には、必ず事前にテストをするなど万全を期しましょう。

②モラハラを受けた際の日記やメモ

モラハラを受けた際の日時・状況を、日記やメモで残しておきましょう。

日記やメモでは、モラハラがあった日時、状況、相手の行動、などをできるだけ具体的に記載していきます。手書きだけが有効というわけではないため、パソコンやスマホの入力でも構いません。

ただしモラハラ夫(妻)に見つかってしまうと、日記を破棄されたり、データを消されるリスクがあります。大切な証拠を失わないためにも、絶対に見つからない場所に隠す、バックアップを取るなど対策をしておきましょう。

③モラハラ相手からのLINE・メール

発言や行動だけでなく、もしモラハラのメールやLINEが残っているなら、必ず証拠保全をしておきましょう。

具体的には、あなた自身を攻撃するような言動、親や友人などを非難する言動などがモラハラの証拠として有用です。ただもしLINEやメールなどの履歴を勝手に消される可能性がある場合は、メールであれば別の安全なメールアドレスに転送しておきましょう。

LINEの場合は、PCにトーク履歴を保存しておくか、LINEの「トーク履歴送信」の機能を使い、テキスト形式で出力しておく方法もあります。

④モラハラを受けたことによる通院 

モラハラが原因での心療内科・精神科への通院履歴は証拠となります。

通院履歴は病院の領収書などではなく、できるだけ診療情報提供(カルテ開示)を求めましょう。診療情報によりモラハラでの精神的な被害状況が記載されていれば、証拠として有用です。

また診療情報でなくても、抑うつ症状などがある場合は、診断書に「モラハラが原因で、〇○の症状が出ている」などと記載があれば問題ありません。

通院を証拠として活用する場合は、必ず医師に「モラハラが原因で心身に不調をきたしている」と告げることが大切です。また1度や2度の通院よりも、長期間通院している方が、深刻な状況として、より重く受け止められる可能性があることも考慮しておきましょう。


モラハラでの証拠収集は、どんな方法でもバレないことが一番重要です。

モラハラ相手に証拠を集めていることがバレてしまえば、逆上されるだけでなく、せっかく集めた証拠を破棄されてしまう可能性もあります。証拠収集の際は、集めた証拠をどこに保管するかもしっかりと考えておきましょう。

モラハラ夫(妻)と離婚する具体的な手順

モラハラ夫(妻)と離婚するための手順を順を追ってみていきましょう。

①離婚後の生活設計をする

まずは離婚後、どのように生計を立てていくかを考えましょう。

すぐに生計を立てることが難しいと感じた場合は、モラハラの証拠集めと並行して、パートや派遣などの仕事を始め生活基盤を整えましょう。

実家など頼れる場所があるなら、事情を話して離婚前に別居できないか考えてみるのもいいでしょう。離婚後の生活が見えなければ、将来の不安からモラハラ夫(妻)から離れることをためらってしまいます。今後のためにも、現実的な将来設計を考えてみましょう。

②身の安全を確保する

モラハラを理由に離婚を切り出すと、相手が逆上する可能性があります。まずは身の安全の確保を優先しましょう。

具体的に離婚を切り出す際、相手から手をあげられる可能性があるなら、親や友人など第三者と一緒に話し合いに臨みましょう。話し合いでは決着がつきそうにないと感じたら、早めに切り上げ調停離婚など次の段階へ進むのも効果的です。

モラハラ加害者は、被害者が逃げることを極端に嫌うため、離婚を切り出すとなりふり構わなくなるケースもあります。身の安全をまずは第一に考え、どのように離婚を切り出すかを考えておきましょう。

③離婚に強い弁護士を探しておく

モラハラが原因の離婚は、スムーズに進むことは稀です。調停離婚・裁判離婚に備えて、離婚に強い弁護士に相談をしておくと安心です。

調停離婚は自分で行うこともできますが、基本的に調停期日は平日に行われます。調停では相手と向かい合って会うことはありませんが、鉢合わせる可能性も否定できません。

仕事で何度も平日に休むことが難しい、少ない可能性でも相手と顔を合わせたくないなら、最初から弁護士に依頼するとリスクを減らせます。

ただ弁護士を雇うとなると、費用面での負担がかかります。裁判離婚になると弁護士は必須となりますが、どの段階でお願いするかは費用・精神的負担の両面から考えておきましょう。

④協議離婚

まずは夫婦間で話し合って、離婚の成立を目指します。

ただモラハラ夫(妻)の場合は、自分が優位に立てる相手を手放したくないという思いから、協議離婚で決着がつくケースは少数です。

協議離婚ができない場合は、次は調停離婚に進みます。

⑤調停離婚

当事者同士の話し合いで離婚が成立しないときは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。

離婚調停は、調停委員と呼ばれる2名(主に男女1名ずつ)が夫婦双方の主張を聞き、離婚の合意・財産分与・親権などについて調整を行います。夫婦だけでなく、第三者が間に入ることで話し合いがスムーズに進むことが期待できます。ただし、あくまで話し合いのため、話がまとまらなければ離婚することはできません。

離婚調停の成立までの平均的な期間は、3カ月~6カ月、長い場合は1年以上かかる場合もあります。反面、かかる費用は申し立て手数料1,200円、切手代1,000円~1,500円程度と少額です。

モラハラ夫(妻)との離婚は相手が離婚を拒否するケースが多く、調停が長引いたり、不成立で終わったりする傾向があります。調停が不成立の場合は、裁判離婚へと進みます。

調停員に話す際は具体的に

調停員は、双方の意見を聞き離婚することが妥当かどうかを判断します。このため調停員に話す際は、実際にどんなモラハラがあり耐えられないかを理解してもらわなければなりません。

例えば「夫のモラハラが辛く、離婚したいです」という発言だけでは、具体的な被害状況がわかりません。これが「毎日ご飯を作ると、お前の飯はまずい、お前は本当に何もできないダメな奴だと言われ続けています」だとどうでしょう。

具体的な場面を想像でき、モラハラ発言が毎日であるとすると、確かに日常的に苦痛を伴うことが理解できます。モラハラでの離婚は証拠が重要です。同時に、具体的なモラハラについてどう伝えるか、ということも非常に重要なポイントです。

⑥ 裁判離婚

調停離婚が不成立の場合は、裁判離婚に進みます。原則として裁判離婚は「調停前置主義」という制度のため、調停離婚が不成立に終わってからしか行うことができません。

裁判離婚で離婚を認められるには、民法が定める離婚事由に該当している必要があります。(参照:民法770条1項)モラハラでの離婚は、離婚事由の「その他の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまるかが論点です。

裁判離婚の成立までの平均的な期間は、半年~2年程度とされています。ただし調停離婚とは異なり、裁判離婚は控訴することができるので、相手が納得しない場合さらに期間が伸びることもあります。

また調停離婚とは異なり、裁判離婚は弁護士費用も掛かるため、諸経費も併せて70万円~100万円程度の費用も必要です。


モラハラでの離婚は、相手が納得せず協議離婚、調停離婚、裁判離婚と、進めば進むほど時間とお金がかかってしまいます。できるだけ早く離婚するためには、調停員や裁判官が納得するだけのモラハラの証拠が大切です。

モラハラでの離婚は難航しやすいことをふまえ、万全の準備をもって離婚に挑みましょう。

モラハラでの離婚は証拠と強い意志を持って

モラハラを受け続けていると、相手に対して恐怖を感じ、自己肯定感が下がることで相手から逃げ出すことが困難になります。

だからこそ離婚に踏み切るためには、有用な証拠とあなた自身の強い意志が必要です。モラハラするような配偶者と、今後の一生を過ごす未来より、離婚への強い意志と確固たる証拠をもって、新しい未来へと前進していきましょう。