モラハラをする人の心理とは?モラハラの原因や被害者の心理と対処法

モラハラとは「モラルハラスメント」の略語で、態度や言動で相手を委縮させ支配する精神的な暴力です。モラハラは夫婦間だけでなく、職場などでも起こることがあり、モラハラ被害を受けると様々な問題が生じてしまいます。

この記事ではモラハラする側の心理だけでなく、モラハラを受けた側の心理的変化を見ていくことで、モラハラの原因と怖さを紹介していきます。

この記事を読んでわかること
  • モラハラする人の心理
  • モラハラをする原因
  • モラハラ被害への対処法

モラハラに走る理由は?加害者の3つの心理

そもそもモラハラ加害者は、なぜモラハラに走ってしまうのでしょうか?モラハラ加害者の心の中をのぞくことで、モラハラをしてしまう原因や加害者側の心理を紐解いてみましょう。

自分が優位に立ちたい

攻撃する相手に対して威圧的な態度を取るモラハラ加害者ですが、実は自分に自信がありません。

自分に自信がないからこそ、被害者に態度や言動で「自分が優位であること」を示し、相手を屈服させることで、自分自身の自信を満足させています。

自分が受けた被害を相手にも味わわせたい

モラハラをしてしまう人の中には、過去に自分がモラハラ被害に遭っていたことで、「相手にも同じ気持ちを味わわせたい」「自分だけが不幸なんて許せない」という心理からモラハラに走ってしまう人もいます。

具体的には家庭では、モラハラ気質の父親に育てられたことで、自分が親になった際に子供や配偶者に同じようにモラハラをしたり、モラハラ上司に悩んでいたのに、自分も部下に対して同じようにモラハラを行うなどがモラハラの連鎖となります。

自分がされた嫌なことを、同じ境遇の人にしてしまうのは「自分だけが不幸なんて許せない」「相手だけ得をするなんてさせない」という歪んだ心理が引き金となっています。

相手を支配したい・依存したい

モラハラ加害者は、相手を支配し依存することで自分の自信を保つための相手を無理矢理自分のそばに繋ぎとめようとします。

具体的には「お前は俺がいないとダメなんだ」「お前はみんなから嫌われている」「お前なんて誰も相手にしてくれない」と被害者に言い続け、被害者自身がそう思い込むことで、被害者の行動をコントロールしようとします。

モラハラ加害者がモラハラ被害者を支配し依存する心理は、自分より下の相手がいなければ自分自身を保てない、加害者側の弱い心理ということができます。


このように具体的にモラハラ加害者の心理を紐解いていくと、強気で攻撃的な発言や態度の裏には、自信のなさや、被害者に対しての依存性など違った一面が見えてきます。

モラハラを受け続けたらどうなる?被害者側の心理の変化

モラハラ加害者の心理を見ていったところで、次はモラハラ被害者がモラハラを受け続けるとどんな心理状態になってしまうのかを見ていきましょう。

自己肯定感が下がる

モラハラを受け続けてしまうと、自己肯定感が下がり自分の行動や言動に、次第に自信が持てなくなってしまいます。

自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れることができる力です。例えば何か失敗したことがあっても、自己肯定感が高い人は「こういうことも時にはある!次から気を付けよう」と事象を前向きにとらえることができます。

しかし自己肯定感が低い人は、同じ失敗をしても「こんな自分だから失敗したんだ、自分はだめなやつだ」と起こった事象以上に自分を追い詰めてしまいます。

抑うつ状態になる

モラハラを受け責められ続けると、抑うつ状態になってしまうこともあります。抑うつ状態とは、過度なストレスにさらされ続けることで、気分が沈み生きるエネルギーを失って、気持ちだけでなく体の様々な不調をきたす状態です。

抑うつ状態が続いてしまうと、その後「うつ病」に移行してしまうケースもあり、精神面でも非常に深刻な状態と言うことができます。

罪悪感を抱く

モラハラ被害者は加害者から攻撃を受け続けると、加害者が怒っているのは自分が不出来なせいだと思い込むようになります。例えば

  • 「お前がバカだからこんなことになったんだ」
  • 「子供がこんな風に育ったのは、お前のせいだ」

という発言をされ続けると、「自分が悪いからこんなことが起こったんだ」「自分のせいで、モラハラ加害者が怒ってしまったんだ」と誤った認識を持つようになります。強い罪悪感を抱くことで、モラハラ被害者はより加害者にコントロールされやすくなってしまうのです。

逃げられなくなる

モラハラ被害者の心理状態で最も怖いのが、自己肯定感が下がり、抑うつ状態になることで、正常な判断を下せなくなり、結果的にモラハラされていることを受け入れてしまう可能性です。

逃げられない心理状態とは具体的に、「自分が悪いから、怒られてしまうんだ」「自分のために、怒ってくれているんだ」と問題を相手ではなく、自分に求めてしまうことでおこります。

長期間モラハラにさらされてしまうと、自分の精神状態を保つために、多くの人はこうした誤った自己認識をしてしまいます。しかしこうした自己防衛本能が、結果的によりモラハラ相手から逃げ出しにくくなる心理状態をつくりだしているのです。


具体的にモラハラを受ける側の心理を見ていくと、自分自身の価値について誤った認識を持ち、次第にモラハラから逃げる気力をなくすという、恐ろしい現実を知ることができます。

現在モラハラで悩んでいる場合は、自分がこういう心理状態になる可能性があるという危機意識をしっかり持っておきましょう。

なぜモラハラをするのか?モラハラの3つの原因を解説

モラハラは加害者側も、被害者側も大きな影響を受けてしまいますが、それではモラハラ加害者はなぜモラハラに走ってしまうのでしょうか。

幼少期の家庭環境

モラハラは幼少期の家庭環境と密接にかかわっています。

例えば親がモラハラをしている場面を見て育ったり、自分自身がモラハラ被害者になっている場合は、大人になって自分も無意識にモラハラをする側に回ってしまうことがあります。

これは父が母に対して日ごろからモラハラをしているところを見て育てば、「父親とはこうやって母親を虐げるものなのだ」「父の方が母より偉いんだ」などという誤った認識を持って育ちかねません。

また自分自身が親からモラハラを受けて育ってしまうと、親子の正しいコミュニケーション方法を学ぶことができず、自分も親と同じモラハラを行ってしまい負の連鎖が起こってしまうこともあります。

性格・気質・疾患

性格・気質・疾患で、モラハラを行ってしまう人がいます。具体的には以下のケースです。

性格・気質
  • 自己中心的
  • 完璧主義
  • 自分の非を認められない
  • 理想が高い
疾患
  • 発達障害(アスペルガー症候群)
  • 自己愛性パーソナリティ障害
  • 境界性人格障害

例えば完璧主義な性格である場合、本人が「家族とはこうあるべき」「妻はこうでなくてはいけない」などの独自の価値観を持っていると、それに符合しない妻の行動を責める言動がモラハラになってしまうことがあります。

またアスペルガー症候群の場合、人への共感能力が乏しい、感情のコントロールができないといった特性が、相手に対して思いやりのない行動に繋がることがあります。

家庭、学校、仕事のストレス

大きなストレスを抱えている場合も、モラハラを行う原因となります。例えば仕事で重要なことを任されている場合、仕事中は常に気を張った状態を維持しなくてはいけません。それは大きなストレスになりますし、どこかにはけ口を求めなければ潰れてしまうこともあるでしょう。

この際に多くの人は自分の趣味や友人と飲みに行くなど、上手にストレスと付き合っていきますが、モラハラ気質な人はそのストレスのはけ口を、身近な人へのマウントを取ることで叶える場合があります。

「俺はこんな重要なことを任されて、毎日本当に大変だわー。それに比べてお前は、一日中ゴロゴロできていいよな」

「俺がこんなに頑張って仕事しているのに、お前の家事は楽だよな」

相手を貶めることで、自分の優位性を保ち、相手に暴言を吐くことで自分のストレスを解消しているのです。


こうしてモラハラの原因を具体的に探っていくと、生まれ持った気質や性格、幼少期の家庭環境などかなり根が深い問題だということがわかります。そして原因を知ることで、あまりに根が深い問題は改善することも容易ではないということも感じることができるでしょう。

モラハラを受けたらどうする?被害を防ぐ具体的な対処法

モラハラ加害者・被害者の心理、そしてモラハラの原因について知ったところで、モラハラを受けた場合の対処法を知っていきましょう。

謝ることをやめる

モラハラ加害者は高圧的な態度や言動で、常に相手を屈服させることで自信のなさや支配欲を満たしています。このためまずはモラハラ被害を防ぐために、相手に対して謝ることをやめてみましょう。

悪いことをしたら謝ることは社会人としては当然ですが、モラハラ加害者の言動の多くは、そもそも謝るべき事柄ではありません。わざと上げ足を取るようなことや、些細な行動について何か言われた場合は、言い返すのは難しくても、受け流したり、無視することで相手に対して思い通りになる相手ではないことをわからせ、ターゲットになることを未然に防いだり、今後モラハラをされる頻度を減らすことを目指しましょう。

信頼できる人に相談する

モラハラを受けていることを、自分だけで抱えることはやめましょう。仕事でモラハラを受けているのであれば、信頼できる上司に相談する。家庭でモラハラを受けている場合は、両親や義両親に相談するなど、信頼できる相手に頼ることが大切です。

モラハラを受け続けると、多くの人は自己肯定感が下がり、洗脳状態になってしまい、モラハラ相手から抜け出すことが非常に困難になってしまいます。

すぐに対策ができないとしても、自分の現状をありのままに話すことを恐れないでください。

本人にモラハラを自覚させる

夫婦などで、どうしても今後も付き合っていきたいと考える場合は、相手にモラハラをしていることを自覚させて症状の改善を目指しましょう。

ただしモラハラ夫・妻に、自身が家族にモラハラをしていることを認めさせるのは並大抵のことではありません。本人たちは自分たちの人格や心を守るために『モラハラ』という手段を使っているため、その根底がくつがえることを最も恐れているからです。

しかしそのうえで、本人たちに自覚を持たせ改善させていきたい場合は、相手のモラハラを指摘し、モラハラに今後屈しない姿勢を見せていくことが肝心です。そして本人がモラハラしている自覚がでてきたら、カウンセリングなど専門的な治療を行う選択肢も持っておきましょう。

専門的な機関に相談する

身近な人に相談することに対してハードルを感じる場合は、専門機関へ相談することも検討してみましょう。夫婦間・職場でのモラハラ相談の窓口には以下があります。

夫婦間のモラハラ相談窓口
  • DV相談ナビ・・・「#8008」で相談できる窓口。全国共通の電話番号で、最寄りの相談機関窓口に自動転送され相談できます。
  • DV相談+・・・「0120-279-889」24時間対応の電話だけでなく、SNSのチャット、メールでも相談できる窓口です。
  • 配偶者暴力相談支援センター・・・配偶者によるDV被害者を支援する機関です。被害を他者に知られたくないなど、DV相談したことが秘匿されるため安心して相談できる窓口です。
職場でのモラハラ相談窓口
  • 総合労働相談コーナー・・・全国の労働局や労働基準監督署によって設置されているものです。モラハラ以外の様々な労働についての悩みを相談することができます。
  • みんなの人権110番・・・モラハラ・パワハラだけでなく、差別など様々な人権相談を受け付ける窓口。電話をかけると最寄りの法務局・地方法務局につながります。
  • 法テラス(日本司法支援センター)・・・モラハラだけでなく、問題についての解決方法を相談できる機関です。問題内容について相談でき、弁護士・司法書士など問題を解決できる人材を直接紹介してもらうこともできます。
  • 労働条件相談ほっとライン・・・違法な残業や労働環境について、専門知識をもったスタッフが相談や、適切な機関への紹介を行う機関です。

モラハラは心を蝕む非常に厄介な出来事です。自分だけで対抗することが難しい、身近な人に自分の現状を知られたくないといった場合は、専門機関を頼るという選択肢をもちましょう。

相手と距離をとる

モラハラは一朝一夕で治ることはありません。もし受け流したり、誰かに相談したりしてもモラハラが治らない場合は、相手から距離を取ることが一番の対策になります。

夫婦の場合は、とりあえず別居する。会社での場合は、部署異動の希望をだしてみるといいでしょう。

どんなに関係性が深い人でも、モラハラ問題の根は深く、改善していくためには長い時間がかかります。自分の心を守るためには、時には相手から距離をとり逃げることも重要な作戦です。

相手と縁を切る

モラハラをする相手と縁を切ることで、モラハラ被害から完全に抜け出しましょう。具体的には夫からモラハラを受けている場合は、勇気をだしてモラハラ夫と離婚する。職場でモラハラを受けている場合は、思い切って転職する。などあなた自身が原因であるモラハラ加害者と縁を切ることで、問題解決へと進んでいきます。

自分が被害に遭った側である場合、自分が逃げたり縁を切ることは理不尽に感じることも多いでしょう。しかしモラハラの原因でお伝えしたように、モラハラの根は深く相手に意識を変えさせるのは困難を極めます。

心を削って相手の変化を待つより、自分を攻撃してくる相手とはすっぱり縁を切ることで今後のあなた自身の心の安寧を求めてみましょう。


モラハラの対処法は基本的に相手を変えるのではなく、あなた自身が相手に左右されなくなることが大事です。そしてもしモラハラ被害がなくならない場合は、早めに相手に見切りをつけることはあなた自身の心を守るためには重要です。

モラハラ被害に遭った場合は自分を守ること優先しよう

モラハラ加害者の心理と原因、そしてモラハラ被害者の心理の変化を見ていくと、モラハラ自体の根が深いだけでなく、モラハラを受け続けることで双方が共依存の状態になり現状から抜け出せなくなるという恐怖を感じる結果となりました。

目に見えない暴力であるモラハラ。体に傷は残らないとしても、モラハラを受けた側の心には、いつまでも抜けない棘が刺さり続けてしまいます。モラハラから距離を置くこと、別れを選ぶことは逃げではありません。もしモラハラ被害に遭うことがあれば、自分を守る最善の行動をとるようにしましょう。