従業員が会社を欠勤する際、上司や人事担当者に理由を伝えるのが一般的です。しかし、何の連絡もなく従業員が欠勤することがあります。なかには普段は真面目に勤務している従業員が急に無断欠勤するケースもあるでしょう。
従業員が無断欠勤した場合、すぐに処分内容を検討するのではなく、なぜ欠勤したのか、どのように連絡を取るのかを検討しましょう。
この記事では真面目な人が急に無断欠勤する理由や対応、予防策を解説します。
- 真面目な人が無断欠勤する理由
- 真面目な人が無断欠勤したときの対応
- 無断欠勤後連絡が取れないときのNG対応
真面目な人が無断欠勤する理由
真面目な人が無断欠勤する理由として以下が挙げられます。
- 身体的・精神的な不調
- ハラスメントやいじめを受けている
- 家庭内のトラブルが起きている
- 事件や事故に巻き込まれた
無断欠勤の原因を理解し、適切な対応を取るためには、従業員の状況を日頃からよく把握しておくことが大切です。
身体的・精神的な不調

日頃から真面目に勤務している従業員が無断欠勤してしまう原因のひとつとして、身体的または精神的な不調の影響が挙げられます。特に、過労やストレスが溜まっていると、ある日突然出勤できなくなる場合もあるでしょう。
精神的な疾患や体調不良が原因で欠勤しているケースでは、従業員が欠勤の理由を伝えられず、結果として無断欠勤が続いている可能性があります。特に、うつ病や強い疲労感に悩んでいる場合、無断欠勤が発生しやすいでしょう。
精神的な問題に関しては、従業員が自分自身の状態を隠すことが多いため、人事担当者や上司は、体調不良の兆候を見逃さないのがポイントです。
ハラスメントやいじめを受けている
職場でのハラスメントやいじめも無断欠勤の原因です。職場の人間関係に問題があり、精神的に追い詰められている従業員は、出勤することに対する恐怖やストレスを感じることがあります。特に、上司や同僚からの不当な扱いを受けている場合、その環境から逃れるために無断欠勤しかねません。
従業員がハラスメントやいじめを受けている場合、その事実を把握し、改善することが求められます。
家庭内のトラブルが起きている
家庭内での問題も無断欠勤の原因として考えられます。家庭内での深刻な問題やトラブルがある場合、従業員はそれに集中せざるを得なくなり、出勤できないケースもあるでしょう。家庭内の問題が原因で欠勤している場合、従業員がそれを職場に伝えることは難しいことが多いため、無断欠勤が続くことがあります。
家庭の問題には、配偶者との関係の悪化や子どものケアが必要な状況、経済的な問題などが当てはまります。家庭内の問題を抱えている従業員に対して、柔軟な対応や支援を行うことが求められるでしょう。
事件や事故に巻き込まれた
日頃からしっかりと出社する従業員にも関わらず無断欠勤が続く背景には、従業員が予期しない事件や事故に巻き込まれている場合もあります。例えば、交通事故や病気、犯罪に巻き込まれてしまった場合、すぐに連絡できません。そのため、会社が率先して安否確認を進める必要があります。
真面目な人が無断欠勤した場合の対応
真面目な人が無断欠勤した場合、次のような対応を取りましょう。
- すぐに本人に連絡する
- 緊急連絡先に連絡する
- 欠勤から連絡までの流れを記録しておく
すぐに本人に連絡する

無断欠勤が続いた場合、まず最初にすべきことは本人に連絡を取ることです。電話やメールで安否を確認し、欠勤の理由を尋ねましょう。従業員が連絡できない理由がある場合は、その状況に配慮しながら、落ち着いて対応することが大切です。無断欠勤の原因が精神的な不調や家庭の問題である場合、最初は気まずく感じるかもしれませんが、安心感を与え、状況を理解しようとする姿勢を欠勤中の従業員に示しましょう。
緊急連絡先に連絡する
本人に連絡が取れない場合、従業員が提供している緊急連絡先に連絡を取りましょう。
一般的に企業は、従業員が何らかの理由で連絡できない状況に備えて、緊急連絡先を従業員本人を通じて把握しています。緊急連絡先に登録された家族や同居人などを通じて、従業員の状態を把握可能です。
ただし、緊急連絡先に連絡する際は、慎重に対応する必要があります。個人情報に関わることなので、必要最小限の情報を伝え、過度に不安を煽らないよう心掛けましょう。
欠勤から連絡までの流れを記録しておく
無断欠勤が続いた場合、その対応の過程を記録に残しておくことが重要です。従業員への連絡方法、緊急連絡先への連絡内容、欠勤理由の確認方法など、全ての流れを記録しておきます。これにより、後で問題が生じた場合や従業員の対応が不十分だった場合に、証拠として活用できます。
また、記録を取ることで、今後同様の事態が発生した際にどのように対応すべきか、参考になる資料作成につながります。
従業員の無断欠勤を放置するリスク
真面目な従業員が無断欠勤しているにも関わらず、放置していると次のようなリスクにつながりかねません。
- 安全配慮義務違反に問われる
- 不当解雇とみなされる
- 社内のモチベーションが低下する
安全配慮義務違反に問われる
雇用主には、安全配慮義務として従業員の安全を確保する義務があります。無断欠勤を放置し、従業員の安否確認や問題解決のための対応を行わないと、企業側が従業員の安全配慮義務を怠ったとして、法的な責任を問われる可能性があります。
特に、従業員が無断欠勤をした原因が精神的・身体的な不調であった場合、雇用主は適切なケアを提供する義務があるため、その義務を果たさないことが重大な問題となることがあります。例えば、対象の従業員が病気によって重大な状態になっているにも関わらず連絡を取らないでいると、会社は安全配慮義務違反を問われかねません。
労働安全衛生法では安全配慮義務違反の罰則として、50万円以下の罰金が科される恐れがあります。さらに、損害賠償を請求される恐れもあります。(※1)
不当解雇とみなされる

無断欠勤が続き、適切な対応が取られない場合、最終的に解雇を検討することもあるかもしれません。しかし、従業員に対して十分な理由を説明せずに解雇を行うと、不当解雇として訴えられる可能性があります。特に、無断欠勤の背景に健康問題や家庭の問題がある場合、従業員に対する配慮が欠けていると判断されることがあるため、解雇前に状況を十分に調査し、解雇の理由が正当であることを証明できるようにしておく必要があります。
不当解雇は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるのに加えて、損害賠償を求められる可能性があります。(※2)
社内のモチベーションが低下する
無断欠勤が繰り返されると、職場内の雰囲気やチームワークに悪影響を与えることがあります。他の従業員が、無断欠勤をした従業員に対して不満を抱くことも考えられるでしょう。このような状況を放置すると、職場全体のモチベーションが低下し、他の従業員も仕事への意欲を失いかねません。
また、無断欠勤が常態化すると、従業員のあいだに「欠勤しても何も起こらない」という認識が広がり、欠勤が増えてしまう悪循環に陥るというリスクもあるでしょう。
無断欠勤した真面目な人と連絡がつかない場合の対応
本人や緊急連絡先に電話をしても、連絡がつかない場合もあります。連絡がつかないのであれば、次のような対応を取りましょう。
- 自宅を訪問する
- 警察に相談する
- 探偵に依頼する
自宅を訪問する

無断欠勤した従業員と連絡が取れない場合、直接的な方法として自宅訪問による安否確認が挙げられます。自宅訪問は、従業員の状態を確認する最も確実な方法のひとつですが、訪問する際は注意が必要です。訪問時には、従業員のプライバシーを尊重し、無理に訪問しないよう配慮することが大切です。
訪問時には、従業員の家族や親しい人に状況を聞くことができる場合もあります。また、従業員が何らかの問題を抱えている場合、その解決に向けた第一歩を踏み出すことができます。
警察に相談する
自宅訪問しても状況が把握できない場合、警察への相談も選択肢に含まれます。警察に相談することで、従業員が事故や事件に巻き込まれていないかの確認が可能です。しかし、警察が捜査を開始するかどうかは、事件性があるかどうかによって異なります。
事件性がないと警察は捜査しない
警察に相談しても、事件性が認められない場合、警察は捜査を行わないことがあります。従業員が無断欠勤を続けている理由が、健康問題や家庭の問題である場合、警察は積極的に介入しないことが一般的です。その場合、再度自宅訪問や他の方法で状況を確認し、従業員に支援を提供しましょう。
探偵に依頼する
警察や自宅訪問で解決が難しい場合、探偵に依頼する方法もあります。探偵は、従業員の行方を追うための専門的な技術を持った存在です。探偵に依頼することで、迅速に状況を把握し、従業員の安否を確認することが可能です。
探偵に依頼する際には、依頼内容と目的を明確に伝えましょう。探偵は、法的に適切な方法で調査を行い、従業員の安否や所在を確認するための情報を提供してくれます。
真面目な人が無断欠勤しないような体制を整えておく
従業員の無断欠勤が起きると、企業は対応に追われてしまいます。人員が少ない企業の場合、他の従業員に負担がかかり、業務の進捗に影響が出かねません。そのため、次のような方法で無断欠勤が起きないような体制を整えておきましょう。
- コミュニケーションを強化する
- 配置転換を検討する
- さまざまな働き方を提案する
コミュニケーションを強化する
無断欠勤の予防には、従業員とのコミュニケーションが不可欠です。従業員が何かしらの問題を抱えている場合、その問題が無断欠勤の原因となりかねません。日常的にオープンなコミュニケーションを促し、従業員が問題や悩みを早期に共有できる環境を作ることが大切です。
例えば、定期的な面談や1対1の対話を通じて、従業員の状況を把握するよう心掛けましょう。業務に対する不満やストレスを感じている場合、それが欠勤の原因となることがあります。職場の環境が整っていれば、従業員が無断で欠勤するリスクを減らすことができます。
配置転換を検討する

真面目な従業員でも、特定の業務や職場環境に対する適性が合わない場合、無断欠勤が続くことがあります。このような場合、業務の内容や担当する部署を変更することで、従業員のモチベーションを改善し、無断欠勤を防止可能です。配置転換を行う際には、従業員との面談を通じて、どのような業務が適しているかを確認しましょう。
配置転換により、新しい役割に対して前向きに取り組むことができ、無断欠勤が減少する可能性があります。また、従業員に新たな挑戦の機会を与えることで、職場全体の士気向上も期待できます。
さまざまな働き方を提案する
無断欠勤の原因として、従業員が仕事と生活のバランスを取れないことが挙げられます。特に家庭の事情や健康面での問題が原因で、出勤が困難になることがあります。このような原因による無断欠勤に対処するためには、さまざまな働き方を提案することが効果的です。
柔軟な勤務時間やテレワークの導入を検討することで、従業員の負担を軽減し、無断欠勤を防止可能です。例えば、家庭の都合で特定の時間に出勤するのが難しい従業員には、フレックスタイム制度を導入するなど、柔軟な働き方を提供することが有効です。さまざまな働き方を提案することで、従業員が自分のペースで働けるようになり、職場に対する満足度向上も期待できます。
真面目な人が無断欠勤には迅速な対処が必要
真面目な従業員が急に無断欠勤した場合、身体的・精神的な不調やハラスメント、いじめの被害、事件・事故の被害などの原因が考えられます。無断欠勤を放置していると、社内のモチベーション低下につながりかねません。無断欠勤した従業員に対しては、本人や緊急連絡先へ連絡してみましょう。しかし、なかには連絡がつかないケースもあります。
連絡がつかないのであれば、警察への相談に加えて探偵への依頼も検討が必要です。探偵であれば、警察が捜索をしないケースであっても、無断欠勤した従業員の行方を探してくれます。探偵に依頼する際は依頼内容と目的を明確に伝えて、希望する調査結果につなげましょう。