探偵にアンダーグラウンドなイメージを抱いて、調査の違法性を心配する人もいますが、通常の探偵業者が行う調査に違法性はありません。探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律 )により、探偵が正当な理由で調査をすることは認められているのです。
一方で、悪質な探偵業者や、法律の知識が乏しい未熟な探偵業者も存在します。依頼の際にはしっかり見極め、優良な探偵業者を選びましょう。
この記事では、探偵の調査が違法にならない理由と、信頼できる探偵事務所の選び方を紹介します。
- 探偵の違法性について
- 探偵が違法にならない理由
- 優良な探偵と悪質な探偵の見分け方
探偵の調査は違法ではない

まず、探偵に正当な理由で調査を依頼することは、違法ではありません。探偵は、浮気調査や人探し、ハラスメント調査など、依頼された事柄に対して適正な方法で調査を行うことが「探偵業の業務の適正化に関する法律」により許可されています。(※1)
探偵は違法行為について熟知しているため、適正な方法で証拠を入手できます。たとえ依頼主が違法性のある調査・調査方法を希望しても、通常の探偵であればそのような依頼は断るでしょう。
しかし、残念ながら、探偵業者の中には悪質な業者も存在するため、国民生活センターにトラブルの相談が寄せられることもあるようです。違法調査や料金トラブルなどを避けるためには、誠実に業務を遂行してくれる優良な探偵業者を選ぶことが重要です。
探偵の調査が違法にならない5つの理由
探偵の調査が違法にならない理由は次の5つです。それぞれ詳しく説明します。
探偵の仕事は探偵業法で認められている

前述のとおり、探偵の仕事については、「探偵業の業務の適正化に関する法律」で認められています。通称「探偵業法」とされ、探偵業法には探偵業を営むためのルールが記されています。(※1)
探偵業者は探偵業法に基づき、公安委員会に届出を出して営業を行っています。探偵業法によると、探偵業務とは「依頼を受けて、対象者の情報を入手することを目的として、調査を行い、調査結果を報告する業務」とされています。
つまり、探偵が浮気調査や人探しなどのために調査を行い、依頼者に調査結果を報告することに違法性はないのです。
探偵が調査で行う尾行や張り込みは違法にならない
探偵業法により、次の行為は、探偵の業務として認められています。(※1)
- 尾行
- 張り込み
- 聞き込み
- その他これに類する方法
例えば、探偵ではない人が尾行や張り込みをすると、場合によってはストーカー規制法で訴えられる可能性があります。(※2)しかし、探偵が依頼を受けて調査のために行う場合には違法にはなりません。
もちろん、探偵であっても、他人の敷地に侵入したり、敷地内の物を破損した場合は違法行為として罰せられます。しかし、届出を出している通常の探偵であれば、このような調査は行いません。
証拠を得るための写真撮影は違法にならない
写真をこっそり撮影するのは盗撮ではないかと心配されるかもしれません。しかし、探偵が依頼された調査に必要な証拠を得るための写真撮影は、違法にはなりません。
例えば、浮気調査のため、対象者に行う次のような写真撮影は、調査のための適正な撮影とみなされるでしょう。
- ラブホテルの出入りを撮影する
- 特定の人物と会っている姿を撮影する
- 他人の敷地に不法侵入することなく撮影する
上記のように、必要な証拠を得るための撮影であれば違法ではないのです。ただし、悪質な探偵業者の場合は、違法とみなされる撮影も行うことがあるため要注意です。優良な探偵業者であれば法律を熟知しているため、違法行為を避けながら撮影を行うことができます。
探偵は犯罪につながる調査をしない
探偵は、犯罪に加担するような調査は行いません。犯罪につながる調査とは次のようなものを指します。
- ストーカー目的
- DV加害者が被害者の居場所を特定する
例えば、「配偶者の浮気調査」は正当な理由として引き受けられます。一方、「元配偶者の居場所特定」の場合は、ストーカー犯罪の恐れがあるため引き受けられません。また、目的が正当でも、違法な手段でなければ調査できないケースでは、探偵は調査を断るでしょう。
個人情報は適切に管理している
探偵は、合法的に得た個人情報を適切に管理しています。探偵が得ることができる情報には次のようなものがあるでしょう。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 電話番号
- 勤務先
- 学歴・職歴
- 年収
- 資産
- 借金・破産歴
探偵は、業務上さまざまな情報を合法的に得られます。それらを公開したり、外部に漏洩させたりすることはありません。
違法な調査とは
探偵業者は、合法的な調査を行います。しかし、なかには悪徳探偵業者も存在し、違法な調査をする可能性もあります。知らずに依頼してしまうことのないよう、違法な調査について具体的に確認しておきましょう。
ストーカー目的の住所特定

ストーカー目的の人物から、対象者の居場所を特定する依頼を受けるのは違法です。法令順守を全うする探偵であれば、ストーカー目的の依頼を引き受けることはありません。
探偵業法の第6条に、探偵業務を行うにあたって、“個人の権利や利益を侵害してはならない”と記載されています。(※1)すなわち、ストーカーなどの個人の平穏な生活を侵害する行為に加担するのは禁じられているのです。
ストーカー目的の依頼であると判断した場合、探偵が調査対象者の個人情報を提供することはありません。
復讐工作・別れさせ屋
探偵が、「復讐工作」や「別れさせ屋」のような行為に関わることは違法です。
例えば、次のような調査は相手に危害を加える可能性があるため、探偵が引き受けることはありません。
- パートナーを奪った相手に復讐する
- 不倫相手の既婚者とその配偶者を離婚させる
探偵業法の第9条により、“調査結果が犯罪に利用される可能性がある場合には、業務を行ってはならない”と定められているからです。(※1)そのため、探偵は依頼者の目的を慎重に判断します。
DV被害者の捜索
DV夫が逃げ出した妻を探し出す調査も、探偵が引き受けることはありません。DV被害者の捜索は、犯罪行為に用いられる調査であると判断されるためです。
配偶者からの暴力被害、すなわちDV被害の被害者の多くは女性です。DV被害はこの国の男女平等の実現において、施策を講ずるべき大きな問題でもあります。そのため、平成13年には、配偶者からの暴力の防止や被害者の保護を図るために「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」が制定されました。(※3)
被害者の人権擁護のためにも、探偵はDV被害者を探し出す手伝いをすることはありません。
他人の車にGPSや盗聴器をつける
探偵であっても、他人の車にGPSや盗聴器をつける行為は違法です。所有者の許可なく車や持ち物にGPSをつけたり、位置情報をひそかに取得したりすることは、ストーカー規制法で禁止されています。(※2)
なお、配偶者が車両にGPSを設置した行為については違法行為とみなされない場合もあります。しかし、車両が会社名義(社用車)である、他人の敷地内に駐車していたといったケースでは、配偶者であっても法に抵触してしまう可能性があるため注意が必要です。
住居の敷地内に入る
他人の敷地内に入って調査行為をすることは、住居侵入の罪に問われる可能性があります。(※4)
次のような行為は、違法とみなされるでしょう。
- 撮影のためにうっかり住居の敷地に入ってしまう
- 浮気相手の部屋を特定するためにマンションに入る
悪質であるとみなされた場合、訴えられる可能性もあります。
個人情報を公開・漏洩する

調査で得た個人情報を公開することはプライバシーの侵害(※5)であり、名誉毀損に該当することもあります。(※6)
前述したように、探偵は合法的にさまざまな個人情報を得られます。真っ当な探偵であれば、その情報を公開したり漏洩したりすることはありません。ところが、悪質な業者は調査で得た情報を脅迫行為に利用することも考えられます。探偵を依頼する際は慎重に精査し、そのような業者を選ばないことが大切です。
他人の住民票・戸籍を得る
探偵が正当な理由や本人の同意がないまま、住民票や戸籍謄本・抄本を取得するのは違法です。住民票や戸籍謄本・抄本を取得できるのは、原則として本人・配偶者・直系親族に限られています。
住民票や戸籍には、氏名・生年月日・住所・本籍地・家族構成など、プライバシーに関わる重要な情報が記載されています。これらの情報が第三者にわたることは、ストーカーや情報の悪用などの犯罪行為につながる可能性があるため非常に危険です。
悪質な探偵業者は、違法な手段でこれらを取得するかもしれません。そのような業者に依頼することは、依頼者もトラブルに巻き込まれるリスクが高いでしょう。
違法に入手した証拠は無効である
違法な方法で入手した証拠は、法的な場では無効であることを覚えておきましょう。浮気性調査でせっかく決定的な証拠を手に入れても、それが違法な方法で入手されたものであれば、裁判で使用できません。
たとえ不貞行為の決定的な現場写真であったとしても、それが他人の住居に侵入して撮影されたものであれば、違法な方法で入手されたものとして、無効になってしまうでしょう。
このようなことからも、法律を熟知した探偵に調査を依頼することがいかに重要か分かります。
安心できる探偵事務所の選び方
悪質な探偵業者や、知識不足の探偵業者は存在します。そのような業者を避け、安心して依頼できる探偵事務所を選ぶためには、こちらで紹介する9つのポイントをチェックしてみましょう。
- 探偵業届出証明書がある
- 行政処分を受けていない
- 事務所が存在する
- 調査結果報告書のサンプルを見せてくれる
- 誇大広告を出していない
- 費用が明確である
- 専門知識や調査力がある
- 応対が丁寧である
- 違法調査を行なっていない
具体的に確認していきましょう。
標識が営業所に掲示されている
まずは、探偵事務所の見やすい場所に「標識」が掲示されているか確認しましょう。
2024年4月から、これまで公安委員会から交付されていた「探偵業届出証明書」が廃止されました。探偵業届出証明書に代わる規定が、標識の掲示です。(※7)
標識には次の事項を記載します。
- 届出書を提出した公安委員会
- 届出書の受理番号
- 届出書を提出した年月日
- 商号、名称又は氏名
- 営業所の名称
- 営業所の所在地
- 営業所の種別
- 広告又は宣伝をする場合に使用する名称
様式は内閣府により定められており、探偵業者がそれに基づいて作成します。標識により、公安委員会に届出をした探偵業者であることが分かるでしょう。
行政処分を受けていない
営業停止命令などの行政処分を受けていない探偵事務所を選びましょう。
各都道府県の警察や公安委員会のホームページには、行政処分を受けた探偵業者について公表されています。
| 公表の対象となる行政処分 | ・指示 ・営業停止命令 ・営業廃止命令 |
| 公表の内容 | ・届出書の受理番号 ・被処分者の氏名 ・営業所の名称と所在地 ・処分内容 ・処分年月日 ・処分理由および根拠法令 |
| 公表の期間 | 処分が行われた日から3年間 |
行政処分が行われた日から3年間は情報が公開されているため、探偵業者を選ぶ際には確認しておきましょう。
事務所が存在する

探偵に依頼をする場合には、実際に事務所に行き、事務所の存在を確認しましょう。
悪質な探偵業者の場合、ホームページに住所が記載されていても、実際には事務所が存在しないパターンもあります。自宅近くのカフェなど、外で会うことを勧めてくる探偵業者には注意しましょう。少し遠くても、事務所に出向いて、さらに前述の「標識」が掲示されているか確認することをおすすめします。
調査結果報告書のサンプルを見せてくれる
調査結果報告書のサンプルも見せてもらいましょう。
実際に依頼した場合、調査後には、調査報告書を提出してもらうことになります。優良な探偵業者であれば、事前に調査結果報告書のサンプルを見せてくれるでしょう。
裁判では、調査結果報告書が証拠として重要視されます。無料相談の段階で、しっかり確認しましょう。
誇大広告を出していない
誇大広告には要注意です。次のような文言を掲げる探偵業者は怪しいと疑ってみる必要があります。
- 「証拠獲得率100%」
- 「絶対成功」
- 「必ずトラブル解決します」
探偵事務所が扱う調査は困難なものが多く、100%成功と言い切ることはできません。絶対・必ず・100%という文言には要注意です。
費用が明確である
見積もりの費用が明確であることは、費用トラブルを避けるために重要です。
悪質な業者は、低料金と見せかけて、車両費や報告書作成費用などの諸経費を別途請求してくることもあります。見積もりの際に、料金に含まれている各種項目を明確にしてくれる探偵業者を選びましょう。
専門知識や調査力がある
トラブルを避けながら調査に成功するためには、専門知識が豊富で調査スキルに長けた探偵業者を選ぶ必要があります。特に確認したいのが、下記の2つです。
- 長年の実績がある
- チームでの調査が可能
長年の実績がある事務所であれば、蓄積した専門知識と調査スキルを期待できます。また、調査内容によって、調査員の人数を揃えられるよう、人材も確保できる探偵業者なら安心です。
応対が丁寧である

探偵に依頼する調査内容は、プライベートで相談しにくいこともあります。心の負担にも寄り添ってくれる、応対が丁寧な探偵事務所を選びましょう。
また、多くの人が初めての依頼であるため、分かりやすく詳しい説明をしてくれる事務所がよいでしょう。依頼者の状況や情報をもとに、下記について具体的に説明してくれる探偵業者なら安心です。
- 調査方法
- 調査に必要な人数
- 調査に必要な日数
- 調査費用
また、無料相談の前には、すでに自分で入手している調査対象者の情報を整理しておくことが大切です。持っている情報は些細なことであってもまとめておき、調査依頼の際に提供しましょう。情報が多ければ多いほど成功率が上がり、調査期間を短縮できる可能性が高まります。
違法調査を行なっていない
もちろん、違法調査を行っていない探偵業者を選びましょう。
次のような調査は違法であるため、そのような調査を行う探偵業者とは関わらないことが大切です。
- 犯罪目的の調査
- データ漏洩による調査
もし、知らずに違法な方法での調査を依頼しても、説明して断ってくれる探偵業者なら安心でしょう。
違法性のない探偵業者を選定しよう
探偵が正規の理由で適正な調査をすることは、法律で認められています。
適正な調査をするためには、探偵は、さまざまな法的知識に精通している必要があります。しかし、悪質な探偵業者は違法な調査を引き受ける可能性もあるでしょう。また、未熟な探偵であれば、知らずに違法な調査をしてしまうこともあります。
違法トラブルに巻き込まれないためには、調査に熟達した、誠実な探偵業者を選ぶことが大切です。ご紹介した選び方を参考に、専門知識に精通した信頼できる探偵事務所に相談をしましょう。
