うつ病を患っている人が失踪した場合、過去の記憶や行動パターンを頼りにすることで、行き先が見つかる可能性もあります。失踪者は、以前に住んでいた安心できる場所や、過去の自分に戻れるような場所を無意識のうちに選ぶ傾向があるからです。
この記事では、うつ病で失踪した人の行き先や捜索するときのポイントなどを詳しく解説します。失踪した家族やパートナーの行き先を探している場合は、ぜひ参考にしてください。
- うつ病の人の失踪先
- うつ病による失踪人を探す際のポイント
- うつ病による失踪の発生理由と防止策
うつ病で失踪した人の行き先は?
うつ病による失踪は、計画的な行動ではなく、衝動的な行動であるケースも少なくありません。特定の行き先を定めないまま家を出ることも多く、無意識に過去の記憶を辿ったり、安心感を求めて行動したりするケースもあります。
ここでは、うつ病で失踪した人が向かいやすい場所の例をいくつか紹介しますので、探す際の参考にしてください。
子どもの頃に住んでいた場所

子どもの頃に住んでいた場所は、多くの人にとって安全な場所として記憶されています。大人になってから多くのストレスやプレッシャーにさらされるなかで、心の安定を求めて、幼少期に過ごした場所に戻ろうとする人もいるでしょう。
その場所には、純粋で無邪気な自分や、まだ悩みが少なかった頃の自分がいたという認識があるためです。たとえば親元を離れて暮らしている人であれば、実家やその周辺に戻ることも考えられます。幼い頃の友人や知り合いに会いたいという気持ちや、懐かしい景色を見たいという気持ちから、実家近くへ向かう可能性もあるでしょう。
以前に住んでいた場所
学生時代や社会人になってから住んでいたエリアなど、過去に暮らしていた場所も有力な捜索候補のひとつです。とくに楽しかった思い出があり、充実した時間を過ごした場所であれば、そこに戻ることで現状から逃れ、過去の自分を取り戻したいという心理が働くケースもあります。
また、以前の住まいの近くにあるカフェや公園など、特定の場所を訪れている可能性も考えられます。引っ越しをしてからも昔の話をよくしていた場合や、定期的に懐かしい場所を訪れていた習慣がある場合は、とくに注意して探すべき場所といえるでしょう。
よく行っていた場所
うつ病を発症する前によく訪れていた場所についても探してみましょう。登山や釣り、写真撮影などの趣味で頻繁に訪れていた場所は、行き先として選ばれる可能性があります。図書館や美術館、馴染みの店など、失踪した人がリラックスできる場所や特別な場所も捜索しましょう。
一人で静かに過ごせる場所や、特定の趣味に没頭できる場所は、心を落ち着かせたいという気持ちから選ばれるケースもあります。失踪前に落ち着く場所の話をしていたり、関連する道具を持っていたりしたのであれば、その場所を重点的に探すことが大切です。
特別な思い入れのある場所
特別な思い出がある場所も、失踪者の行き先として考えられます。たとえば、家族や友人との思い出の場所、プロポーズをした場所、初めて旅行した場所など、失踪した人にとって人生の転機となったような場所です。これらの場所は幸せな記憶と結びついているため、現在の苦しみから一時的にでも解放されたいという気持ちから、無意識に向かってしまうことがあります。
また、過去の思い出に浸ることで自分を見つめ直し、心を癒そうとしているケースもあるでしょう。失踪者が大切にしていた写真や手帳、日記などを調べることで、ヒントが見つかるかもしれません。
うつ病で失踪した人の行き先を探すためにすべきこと
失踪者の安否を確認するためには、迅速かつ多角的な捜索が重要です。感情的にならず、冷静に状況を整理して、手がかりをひとつずつ確認していきましょう。ここでは、失踪者の行き先を探すためにすべきことを具体的に紹介します。
警察に連絡する

うつ病による失踪に気づいたら、まずはすぐに警察に連絡することが重要です。警察は、行方不明者の捜索に関する専門的なノウハウとネットワークをもっています。状況によっても異なりますが、行方不明者届を提出し、特異行方不明者(※1)と認定されれば本格的な捜索活動を実施してくれるでしょう。
警察に連絡する際は、失踪者の特徴や失踪時の状況、心当たりのある場所などをできるだけ詳しく伝えることが大切です。また、最近の様子やうつ病の診断を受けていること、服用している薬などについても伝えるようにしましょう。
パソコンやスマートフォンを調べる
失踪者が使用していたパソコンやスマートフォンには、多くの情報が残されている可能性もあります。ブラウザの閲覧履歴や検索履歴、メールの送受信履歴、SNSのメッセージなどを確認すれば、失踪直前の行動や関心事を把握できるかもしれません。
たとえば、特定の場所を調べていたり、誰かと連絡を取っていたりする形跡が見つかるケースもあります。ただし、パスワードがかかっている場合は、無理に解除しようとせず、専門家や警察に相談しましょう。勝手にパスワードを解除してしまうと、プライバシーの侵害や不正アクセス禁止法違反に該当してしまう可能性があります。(※2)(※3)
位置情報検索アプリを確認する
もし、失踪者と位置情報を共有する機器を持っていたり、位置情報検索アプリを使用していたりする場合は、すぐに確認してみましょう。スマートフォンのGPS機能や、「iPhoneを探す」といった特定の機能を使えば、最後に位置情報が更新された場所を特定できる可能性もあります。アプリの設定状況や電源が入っているかどうかなども確認し、もし位置情報を確認できたら、すぐに警察へ連絡して情報を共有しましょう。
家族や友人に連絡する

うつ病により失踪した人は、身近な家族や友人、過去に親しかった人に連絡を取っている可能性があります。心当たりのある人全員に連絡を取り、失踪者の安否や居場所について情報がないか確認しましょう。
また、失踪者と親密な関係にあった人であれば、行動パターンや考え方について、他の人が気づいていないヒントをもっているかもしれません。状況を説明したうえで協力を仰ぎ、情報を共有しながら捜索を進めることが重要です。
失踪の前兆を思い出す
失踪の直前やそれ以前の行動や言動に、何らかの前兆があったかもしれません。「死にたい」「消えたい」といった直接的な言葉だけではなく、「もう疲れた」「どうでもいい」「どこか遠くに行きたい」といった無気力な発言はありませんでしたか。
また、食事や睡眠の変化、身の回りの整理など、些細な行動や変化でも見逃さず思い出すことが大切です。さまざまな兆候を思い出すことで、失踪者の心理状態や行き先を把握するヒントを得られるでしょう。
6.心当たりのある場所を探す
失踪者の性格や趣味、過去の行動パターンから、心当たりのある場所をリストアップし、自らも捜索することが有効です。先述したような、子どもの頃に住んでいた場所、以前に住んでいた場所、よく行っていた場所、特別な思い出のある場所などを重点的に探してみましょう。自分で捜索活動を始める前に、警察に連絡しておくことも大切です。
うつ病による失踪や逃避行動が発生する理由
うつ病による失踪や逃避行動が発生する理由として、以下のようなことが挙げられます。
- 自分のことを理解してもらえない
- 一人になりたい
- ストレスから逃げ出したい
うつ病を患っている人が失踪や逃避行動を起こす背景には、さまざまな心理的要因が隠されています。単に「現実から逃げたい」という気持ちだけではなく、病気の症状によって正常な判断能力が低下しているケースもあるでしょう。ここでは、うつ病による失踪や逃避行動が発生する主な理由について解説します。
自分のことを理解してもらえない

うつ病になると、他者とのコミュニケーションを避けてしまうケースがあります。自分のつらい気持ちや苦しみを誰にも理解してもらえないと感じ、孤立感を深める人もいるでしょう。
とくに家族や友人から「気持ちの問題だ」「もっと頑張れ」といった安易な言葉をかけられると、「この人たちには自分の苦しみがわからない」と感じ、絶望感を募らせてしまいます。その結果、誰も自分を知らない場所へ逃げ出したいという気持ちが強くなり、失踪に至ることもあります。
一人になりたい
うつ病の症状が重くなると、人と接すること自体が大きな負担となります。普段であれば気にならないような些細な会話や他人からの視線であっても、苦痛に感じる人もいるでしょう。苦痛が大きい状態になると、「誰とも会わずに一人で静かに過ごしたい」という気持ちが強くなります。
家族や友人、そして社会全体から距離を置くことで心の安らぎを得ようと、無意識のうちに人里離れた場所や、誰も知らない場所へ向かうケースもあるでしょう。一時的な逃避行動ではなく、病気の症状によって引き起こされる長期的な失踪である可能性も高いため注意が必要です。
ストレスから逃げ出したい
ストレスや苦痛から逃げ出したいという理由で、失踪する人もいます。仕事や人間関係、家庭内の問題など、日常的に抱えているストレスから解放されたいという気持ちは、誰にでも起こり得るでしょう。
しかし、うつ病を患っている人は、ストレスや苦痛に耐える力が著しく低下しているため、その原因から完全に切り離されたいという衝動にかられ、失踪という行動に出てしまうケースもあります。逃避先で何をするか、失踪したらどうなるか、という具体的な計画はなく、単純に今ある苦しみから逃れることだけを考えて行動してしまうケースも多いでしょう。
うつ病で失踪した人は早期に発見することが大切
うつ病を患っている人が失踪した場合、一刻も早く発見することが何よりも重要です。うつ病の症状は、失踪中にさらに悪化する可能性もあり、最悪の場合、自殺という選択に至ってしまう人もいるかもしれません。
警視庁「令和6年中における時雑者の状況」によると、原因・動機が判明している自殺のうち、最も多いのは健康問題(1万2,029人)でした。なかでも最も多かった疾患が、うつ病(4,245人)だったという統計が出ています。(※4)

早期発見のためには、警察への捜索依頼と並行して、専門家の力を借りることも有効です。
探偵に相談することも重要
警察の捜索活動によって失踪者が見つかるケースもありますが、個別の状況に特化したきめ細やかな捜索は難しい場合もあります。警察の捜査で進展がない場合は、探偵に相談することも有効な手段です。探偵は、依頼者の情報をもとに、個別の状況に合わせた独自の捜査を行います。
また、聞き込み調査や尾行、張り込みなど、専門的な手法を用いて失踪者の行方を探します。とくに失踪者が特定の場所や人物と関わりがある場合は、探偵に依頼することでより早く有力な情報を得られるでしょう。
探偵に依頼するときに準備すべきもの
探偵に依頼する際にできるだけ多くの情報を提供することで、捜索の成功率を高められます。具体的には、以下のような手がかりや情報を提供しましょう。
- 失踪者の基本情報(氏名・年齢・身長・体重・職業など)
- 失踪者の特徴(髪型・癖・ホクロ・傷跡など)
- 失踪者の写真(全身が写っているもの・特徴がわかりやすいものなど)
- 失踪時の服装(失踪時に着ていた服・持ち物など)
- 失踪に至った経緯(直前の様子・言動・うつ病の症状・通院歴・服用している薬など)
- 心当たりのある場所(過去の行動パターンから考えられる行き先・思い出の場所など)
- 人間関係の情報(親しい友人・交際相手・連絡を取りそうな人物など)
提供する情報が多ければ多いほど、探偵は効率的に捜査を進めることが可能です。とくに写真などは、できる限り新しいものを提供しましょう。
依頼する探偵の選び方
探偵事務所は数多く存在するため、信頼できるところを選ぶことが重要です。以下のポイントを参考に、自分に合った探偵を選びましょう。
- 公安委員会への届出がされているか
- 料金体系が明確か
- 対応が丁寧か
- 過去の実績や評判は問題ないか
探偵業を営むには、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会への届出が必要です。Webサイトや探偵事務所で届出番号を確認しましょう。料金体系も重要なチェックポイントのひとつです。料金が明確になっているか、追加料金や不明瞭な費用が発生しないか、事前にしっかりと確認しましょう。
また、デリケートな内容を相談するため、依頼者の心情に寄り添い、親身になって話を聞いてくれる探偵を選ぶことも大切です。Webサイトに掲載された実績や相談者のレビューなども参考にしながら、複数の探偵事務所を比較検討したうえで、最も信頼できると感じたところに依頼しましょう。
うつ病による失踪を防止するためのポイント
うつ病の症状によって引き起こされる失踪は、家族や周囲の人にとって大きな負担となります。失踪後の対応も重要ですが、そもそも失踪を防ぐための関わり方も大切です。
ここでは、失踪を防ぐために家族や周囲の人ができることを紹介しますので、チェックしておきましょう。
優しく出迎える
失踪者を発見したときや自分で帰宅したときは、優しく出迎えることが大切です。再会できたとはいえ、失踪した人が不安や申し訳なさを感じている可能性もあります。「帰ってきてくれた安心したよ」「よく帰ってきてくれたね」などと優しい言葉をかけ、まずは無事に再会できたことを喜びましょう。不安やストレスから再び失踪することがないよう、安心できる場所であると伝える必要があります。
失踪したことを責めない

失踪は、病気によって引き起こされた行動です。本人の意思でコントロールできなかった可能性も高いため、失踪したことを責めたり、問い詰めたりするのは避けましょう。
責められることで、失踪者は「自分は間違っていた」「家族に迷惑をかけた」とさらに自分を責め、罪悪感から再び逃げ出したいという気持ちになってしまう可能性もあります。
ゆっくりと話を聞く
しばらくして本人の気持ちが落ち着いた頃に、ゆっくりと話を聞く機会をつくりましょう。なぜ家を出て行ったのか、そのときの気持ちはどうだったのか、非難や叱責をせずに耳を傾けることが大切です。また、無理に話させようとせず、「話したくないときは話さなくていいよ」と伝え、安心して過ごしてもらいましょう。
休める環境を整える
うつ病からの回復には、心身ともに休める環境が不可欠です。失踪から戻ってきた後は、仕事や家事などの負担をできる限り減らし、本人がゆっくりと休めるように配慮しましょう。
また、精神科医やカウンセラーとの連携を密にし、専門家の指導のもとで適切なケアを続けることが重要です。家族や周囲の人が失踪者を一人にさせず、支えていく姿勢を見せれば失踪の再発を防げるでしょう。
うつ病による失踪が発生したら早急に行き先を探そう!
今回は、うつ病による失踪が発生する理由や、考えられる行き先などを紹介しました。失踪した人は安心できる場所を求め、子どもの頃に住んでいた場所やよく訪れていた場所などに行く傾向があります。友人や知人からの情報も集めながら、心当たりのある場所を探してみましょう。
ただし、自分だけで発見するのが難しい場合もあります。早急に見つけるためにも警察や探偵などに相談することも大切です。