風の噂で昔の友人がなくなったことを聞いた。ずっと連絡を取っていなかった前妻の訃報を知った。死は誰にでも平等に訪れるものですが、大切な人だからこそしっかりと弔いたいという気持ちがわくものです。
この記事では、大切な人がなくなったことを知ったとき、お参りするためにお墓を探すにはどんな方法があるのかを詳しく解説していきます。
墓前に向き合うことは、故人との別れだけでなく自分自身がその方の死に向き合う大切なステップです。ぜひ手掛かりが少なくてもあきらめることなく、納得できるお別れをしましょう。
- そもそも故人のお墓を自力で探すことはできるのか?
- 家族・友人のお墓の具体的な探し方
- 故人のお墓を探す前に知っておきたいこと
故人のお墓を探すことはできるの?
埋葬場所のわからない個人のお墓を探すことは不可能ではありません。
ただし、お墓の場所については公的に届出を出す必要はないため、縁遠くなってしまってからの時間が経過しているほど見つけ出すことが困難です。
家族のお墓を探す方法
家族であれば、比較的多くの方法で故人のお墓を探す方法があります。自分の場合はどの方法が試せるか、考えながら見ていきましょう。
墓地がわかる場合は墓碑銘・墓誌・卒塔婆を見る
埋葬されている墓地はわかっているが、墓の場所がわからなくなってしまった場合は「墓碑銘」「墓誌」「卒塔婆」を見ることでお墓を特定しましょう。
墓碑銘は「石田家之墓」「原田家之墓」のように、苗字のみが記載されているのが一般的です。大きな墓地では、同じ苗字のお墓がたくさん見つかる場合があります。
そういったケースの場合、自分が探している人物が眠るお墓かどうか判断するには、次のような方法で探しているお墓を特定していきます。
- 墓石の裏や横に故人の名前、戒名、没年を確認する
- 卒塔婆に記載されている没年・戒名を確認する
- 墓碑に探している人物の記載がないかを確認する
卒塔婆とは、亡くなった人のお墓の後ろに立てる1~2mほどの板です。「追善供養」のために用いられるもので、戒名・命日・経文などが彫られています。
墓誌は墓石の横に建てられた石板です。一般的には、墓地に埋葬されている個人の生没年月日・本名・戒名が記載されている石碑を指します。
予算や区画の関係で墓誌がない場合は、墓石などに彫っていないか確かめてみましょう。
埋没許可証を確認する
直接お墓の場所がわかるわけではありませんが、何かのヒントになる可能性がある「埋没許可証」を確認してみましょう。
埋没許可証とは、火葬した後遺骨をお墓やお寺に納骨する際に必要となる許可証です。一般的に納骨は49日を過ぎてから行うため、この際にお寺・墓地・霊園などに「埋没許可証」を提出します。
「埋没許可証」は5年の保存義務があります。故人がなくなってから5年以内であれば、霊園・お寺などへの問い合わせによって開示してもらえる場合があります。
ただし個人情報の観点から、埋没許可証の開示は家族や親族といった間柄に限られます。友人や知人といった間柄の場合は、これ以外の方法を考えましょう。
除籍謄本でヒントを得る
除籍謄本を取得し、ヒントが得られないかを考えてみましょう。
除籍謄本とは、死亡・婚姻・分籍などにより、戸籍の中の人物が全て抜けた戸籍をさします。故人の除籍謄本を取得できるのは本人・配偶者・直系親族で、代理人が取得するには委任状が必要です。
次のような事情であれば、除籍謄本を取得することで「最後に本籍があった場所」を特定できます。
- 生き別れてしまった父のお墓参りをしたい
- 交流のなかった祖父母の墓参りをしたい
亡くなったときの本籍地がわかれば、そこからお墓の場所を探し出せるヒントが得られるかもしれません。
友人のお墓を探す方法
友人や恩人のお墓を自力で探し出す方法は限られており、親族のお墓を探すよりも困難です。しかし、全くできることがない、という訳ではありません。
以下で紹介する4つの方法を試してみましょう。
遺族に連絡をとってみる
友人のお墓を探す際に最も有力な方法が、遺族を探すことです。
例えば友人の実家がわかる場合は実際に連絡を取り、直接お墓の場所を尋ねるとよいでしょう。自宅の場所がわからない場合は、共通の知人のなかに連絡先や自宅の住所を知っている人がいないか確認しましょう。
他の友人に連絡を取ってみる
生前に親しくしていたほかの友人と連絡が取れる場合は、お墓の場所を知らないか聞いてみましょう。実際にお葬式に出席していたり、お墓参りをしたりしていれば、お墓の場所を教えてもらえます。
また、お墓の場所はわからなくても、親族の居場所や連絡先を知っている可能性があります。親族の居場所や連絡先から遺族につなげることができれば、お墓の場所を特定できる可能性も高くなります。
お寺・霊園管理者に聞き込みをする
埋葬されている地域に心当たりがある場合は、お寺や霊園の管理者に直接問い合わせるといった方法もあります。
個人情報保護の意識が高まっている昨今、家族や親族以外に対しての情報開示についてはどのお寺や霊園も慎重になっています。そのため、問い合わせをしてもはっきりとした回答がもらえない可能性が高いでしょう。
また、お寺や霊園の多い地域では、こうしたしらみつぶしの捜索は時間と労力がかかります。
SNSを使ってまずは知人を探す
亡くなった方のSNSを知っている場合は、SNSの投稿からお墓の特定につながる情報を収集する方法もあります。
本人が亡くなったあとでも、遺族がアクションを起こさない限りアカウントや投稿内容はそのまま残り続けます。フォロワーの中から故人のアカウントと親交があったアカウントに直接DMなどで連絡を取ることで、新しい情報が得られるかもしれません。
ただし、SNSは本来匿名性の高いもののため、急に連絡をもらった相手の警戒心を解くことはなかなか難しいでしょう。
事情を丁寧に説明し、相手に不信感を与えないよう対応することが大切です。
お墓探しの方法を実際に見ていくと、家族や親族と友人や恩人といった間柄では取れる手段が大きく違うことがわかります。
どのケースであっても、自力でお墓を探すことは不可能ではありません。地道な調査を諦めずに行うことが成功の秘訣といえます。
故人のお墓探しを探偵事務所に依頼する場合
どうしても自分で見つけることができずにプロに依頼した場合、どのような方法でお墓を探すのでしょうか?
依頼した際の費用相場も併せて紹介します。
どんな方法でお墓を探すのか?
プロがお墓探しをする場合は、以下のような手段でお墓のある場所を探していきます。
- 対象者の人間関係への聞き込み
- 対象者の近隣への聞き込み
- 親族の場合は戸籍謄本や除籍謄本での調査
- 墓地・霊園など関係者の聞き込み
- 探偵事務所独自のデータベース
自力での捜索では、友人や知人などに聞き取りをする、SNSをチェックするなど、できることに限りがあります。
一方、捜索のプロである探偵事務所は、尾行・張り込み・聞き込みなどを軸に捜索を行います。
独自のノウハウやこれまでの経験を活かし、小さな手掛かりから推測を立てお墓の場所を特定していきます。
お墓を探す調査の具体的な費用は?
お墓探しの費用の相場は5万~50万円ほどです。
一般的な人探しの費用相場は5万~100万円ほどかかるため、人探し費用よりは安価で済む可能性が高いでしょう。
人探し同様、状況次第で調査難易度が大きく異なるため、一概にいくらということはできません。
探偵事務所のお墓探しでは、次のような料金プランを設定しているのが一般的です。
プロに依頼する前に、自分のケースではどのような料金形態が適しているかを考えておくといいでしょう。
- 時間料金型
- パック料金型
- 成功報酬型
料金体系については人探し費用の記事で詳しく解説しているため、詳細を知りたい場合は以下の記事も参考にしましょう。
より具体的な金額を知りたい場合は、多くの探偵事務所で行っている無料相談を利用して、見積もりを出してもらいましょう。
2〜3社の探偵事務所で相見積もりをすれば、自分のケースでの相場を知ることができます。
故人のお墓を探す際に知っておきたいこととお墓参りのマナーとは
次はお墓を探す際に知っておきたいことと、実際に探している故人のお墓を見つけた場合のマナーについて学んでいきましょう。
そもそもお墓がない場合があることを知っておく
お墓探しをするうえで、そもそもお参りするお墓がないケースについても把握しておきましょう。
例えば「散骨」や「自宅供養」といったケースです。散骨は海や山林に散骨を行うため、そもそも墓地がありません。また、納骨には期限はないため、遺族が自宅に遺骨を置いている場合も墓地がないケースが多いでしょう。
故人の遺骨について引き取り手がない場合は、無縁仏として行政などが葬儀を行い、無縁墓地や無縁塚といった場所で合祀されている可能性があります。
お墓を探すうえで、そもそも探しているお墓がないというのは致命的な事態ですが、こういう事例もあるということを頭の片隅に置いておきましょう。
お墓の場所も個人情報となる
2005年に個人情報保護法が全国施行されて以降、自治体・企業だけでなく、個人のあいだでも個人情報の取り扱いについての意識が高まっています。
住所や電話番号などと同様、お墓の場所も個人情報の1つです。
共通の友人・知人がお墓の場所を知ってたとしても、個人情報保護の観点から簡単に教えてくれない可能性があります。
「教えてくれてもいいのに」と落ち込んだり腹を立てたりせず、違う方向でのアプローチを考えましょう。
身内に連絡がつく場合は、お参り前に一言連絡を
もし管理をしている親族の連絡先が分かる場合は、お墓参りをすることを事前に伝えておきましょう。
お墓は大切な人が安らかに眠る場所です。親族のなかには、見知らぬ人物がお参りしていることについて不安に思う方もいるでしょう。
連絡先を知っているのなら、お参り前に一言ご挨拶することで親族の方を不安にさせたり、変に誤解されたりするのを防ぐことができます。
お供え物などを墓地に置いていかない
お墓参りの際、生花はそのままで問題ありませんが、お供え物については必ず持ち帰るようにしましょう。
お供え物をそのままにしておくと、カラスやタヌキといった動物に荒らされたり、腐ってしまったりと、お墓が汚れてしまう原因になります。
故人の好きだったものや果物などをお供えしてからお参りをした際は、お供え物をきちんと持ち帰るまでがルールという意識を持っておきましょう。
お参りするタイミングに決まりはない
あまりお墓参りに行ったことがない人のなかには、お参りするタイミングがわからないという人もいるでしょう。一般的にお墓参りはどのタイミングで行っても構いません。
主なお参りの目安としては「命日(祥月命日)」「月命日」「お盆」「お彼岸」があります。しかし故人に冥福を祈るという点では、どの日に行ったとしても問題ありません。日付については、そこまで格式ばったことを考える必要はないでしょう。
お墓参りに決まったタイミングはありませんが、自分の都合ばかり考えてはいけません。慌ただしいことが予想される時期は控えるなど、ご遺族に対する気遣いを忘れないことが大切です。
服装について特に決まりはない
お墓参りの際の服装について特に決まりはありませんが、派手な色や露出の多い服などは適さないとされています。
また、霊園の敷地内は砂利などが敷き詰められている場合も多いため、サンダルやヒールといった歩きにくい靴に関しても控えたほうがよいでしょう。
お墓参りではほかの参拝者に会ったり、ご親族の方に会うことも考えられます。そうした方たちへの配慮からも、できれば控えめな服装を心がけたいところです。
小さなころからお盆やお彼岸にお墓参りをする習慣がある場合は、こうしたマナーについては自然に学んでいることも多いですが、そうしたことに縁遠い場合は失礼に値しないように、お墓参りについてのマナーをしっかり押さえておきましょう。
まとめ
「大切な人のお墓に手を合わせたい」というのは、故人をしのぶ気持ちとしてとても大切な思いです。しかし実際に探すとなると、すでに音信不通になって年月が経っている場合は、なかなか難しいのが実情です。
しかし、お墓を探す方法が全くないわけではありません。今回紹介した方法を地道に試すことで、お墓の場所を特定できる可能性は十分あります。
また、もし自分で探すことが困難な場合は、プロに依頼するという方法もあります。
いずれにせよ、あなた自身が納得できる方法をとるのが一番です。
故人との別れは、墓前に手を合わせるだけではありません。ぜひあなた自身が大切な人と、納得した別れができる方法を模索してみてください。