結婚詐欺の慰謝料を請求する方法、金額の相場や証拠の集め方について

結婚詐欺で慰謝料請求はできる?

結婚詐欺に遭ったら、慰謝料を請求できる可能性があるので泣き寝入りする必要はありません。
ただし慰謝料を払わせるにはいくつかの条件を満たし、証拠を集める必要があります。

今回は結婚詐欺で慰謝料請求できるケースとできないケース、慰謝料の相場の金額や証拠の集め方、慰謝料請求の手順を解説します。

信じていた相手にだまされて傷ついている方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること
  • 結婚詐欺で慰謝料請求できる条件
  • 結婚詐欺で請求できる慰謝料
  • 結婚詐欺で必要な証拠と集め方

結婚詐欺で慰謝料請求できる条件

結婚詐欺とは、相手に「結婚しよう」などと告げて「将来結婚することを前提に、お金をだまし取る詐欺」をいいます。

結婚詐欺の典型的なパターン

結婚詐欺の典型的なパターン

結婚詐欺の典型的なパターンは、以下のように「結婚を前提に交際している状態で、相手に『お金に困っている』と告げ、援助を求める」ものです。

お金を要求する事情はさまざまです。

  • 事業に失敗した
  • 親の借金を引き継いでしまった
  • 将来の夢を叶えたいけれどお金がない
  • 水商売をやめてまともな仕事に就きたい
    • 必ず返すから、と言われてお金を要求してくる

このように結婚するつもりの相手から同情を誘うような言葉をかけられると、多くの方は信用してお金を渡してしまうでしょう。
しかし、相手は始めから結婚するつもりなどないので、お金を持って逃げてしまいます。音信不通になったり、自然なかたちを装ってフェードアウトされたりすることも。

今までの電話番号が通じなくなったり、相手から聞いていた住所などが架空であったりして、素性を突き止めることすらできなくなるケースも少なくありません。

もしも結婚予定の相手にお金を渡していたのに逃げられた方は、結婚詐欺を疑った方がよい可能性があります。

結婚詐欺で請求できる慰謝料

結婚詐欺で請求できる慰謝料には、以下の2種類があります。

  1. 詐欺にもとづく慰謝料
  2. 婚約破棄にもとづく慰謝料

詐欺にもとづく慰謝料

詐欺にもとづく慰謝料

人からお金をだまし取る行為は「詐欺罪」であり、明らかな違法行為です。
だまされた被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、慰謝料請求できる可能性があります。

詐欺が成立する要件
法律上、詐欺が成立するには以下の要件を満たす必要があります。

被害者をだます行為

加害者が被害者を「だました」ことが必要です。結婚詐欺の場合「本当は結婚するつもりがないのに結婚の約束をした」ことや「本当はお金に困っていないのにお金に困っていると告げた」事情が必要と考えましょう。
結婚の約束もしていないのに結婚できると思い込んだ場合や、何もいわれていないのに勝手にお金を支援した場合には詐欺になりません。

被害者がだまされて錯誤に陥ったこと

被害者が加害者の嘘を信じて勘違いしてしまったことが必要です。相手が嘘をついていると見抜いている場合には詐欺になりません。

• 錯誤にもとづいて財産給付が行われたこと
被害者が勘違いをしたままお金などの財産を渡してしまったことです。だまされてもお金を渡さなければ詐欺未遂になります。

• 財産の移転があったこと
お金などの給付により、その利益が加害者へ移転した時点で詐欺が成立します。

婚約破棄にもとづく慰謝料

婚約破棄にもとづく慰謝料

「結婚しよう」といわれて信じていたのに、正当な理由なく破棄されたら人は大きく傷つくでしょう。
そういった場合にも精神的苦痛に対する賠償金としての慰謝料を請求できます。

婚約破棄にもとづく慰謝料請求の場合には、必ずしもお金をとられたことは必要ではありません。たとえ何もだまし取られていなくても、婚約破棄された事実そのものにより慰謝料を請求できる可能性があります。

婚約破棄が成立する要件

• 婚約が成立していたこと
「婚約」が成立している必要があります。基本的には「結婚する」と約束したら婚約が成立しますが、実際には「外形上婚約が成立しているといえる事情」まで要求されます。
たとえば婚約指輪や結婚指輪を交換した、結納式を行った、両親の顔合わせを行った、結婚式の準備をしていたなど、何らかの具体的な要素が必要と考えましょう。

• 正当な理由なく破棄されたこと
婚約が成立したにもかかわらず「正当な理由なく」破棄されたときに慰謝料が発生します。
他に好きな人ができた、親に反対された、性格が合わないから急に嫌になったなどの事情であれば「正当な理由はない」と考えられます。もちろん結婚詐欺のケースでも正当な理由はありません。

一方で、相手に暴力を振るわれた、浮気された、侮辱されたなどの事情でやむなく婚約を解消するなら、正当な理由があるといえます。そういったケースでは婚約を解消しても慰謝料は発生しません。

だまし取られたお金も取り戻せる

結婚詐欺に遭うと、通常はお金もだまし取られているものです。その場合、慰謝料とは別に奪われたお金も取り戻せると考えましょう。
たとえば相手から「事業に失敗した」といわれて500万円を渡してしまった場合、慰謝料が100万円だとすれば100万円の慰謝料とだまし取られた500万円の「合計600万円」を請求できます。

慰謝料はあくまで「精神的苦痛に対する損害賠償金」であり、実際に発生した損害とは別個に計算されるので、押さえておきましょう。

結婚詐欺による慰謝料請求が難しくなるパターン

以下のような場合、結婚詐欺による慰謝料請求は難しくなる可能性があります。

口約束で、婚約があいまい

「結婚しよう」とはいっていても、当事者間の口約束で何の証拠も残っていなければ、婚約が成立したとはいいにくくなります。指輪の交換や結婚式の予約、両親の顔合わせなど何もしていないなら、結婚詐欺による慰謝料請求が難しくなる可能性があるでしょう。

ただしお金をだまし取られたなら、婚約が成立していなくても奪われたお金は取り戻せます。
最近では出会い系サイトなどを使い、結婚を前提としないで恋人からお金をだまし取る悪質な「恋愛詐欺師」も増えています。あきらめる必要はありません。

お金をとられていない

「詐欺」が成立するにはお金をだまし取られたことが要件となります。
結婚の約束はしたけれどお金をとられていなければ「詐欺」は成立しません。
ただしお金を渡していなくても、婚約破棄の慰謝料請求はできる可能性があります。
お金を渡していないからといってあきらめる必要はありません。

自分からお金を渡してしまった

詐欺が成立するには、相手に「だまされたことによってお金を渡した」事情が必要です。
自分からお金を渡してしまったり高価品をプレゼントしたりした場合、法律上は贈与となるため後から取り戻すことはできません。

ただしこの場合でも、正当な理由なく婚約を破棄されたことに対する婚約破棄の慰謝料は請求できる可能性があります。

結婚詐欺の慰謝料相場と高額になりやすいパターン

結婚詐欺の慰謝料相場と高額になりやすいパターン

結婚詐欺の慰謝料の相場は、30万円~200万円程度です。事情によっては300万円以上の高額な慰謝料が認められる可能性もあります。

以下のような事情があれば、慰謝料が高額になりやすいと考えましょう。

交際期間、婚約期間が長い

交際期間や婚約期間が長いと、被害者は結婚への期待を高めてしまいます。それにもかかわらず裏切られると精神的苦痛が大きくなるので、慰謝料が高額になります。

被害者の年齢が高い

被害者の年齢が高いと、新しい結婚相手を見つけるのが困難になります。特に女性の場合、出産年齢も重要な要素となるでしょう。そういったケースでも慰謝料が高額になる傾向があります。

被害者が妊娠した

被害者が妊娠したにもかかわらず裏切られて中絶したりひとり親になることを余儀なくされたりしたら、被害者は大きな精神的苦痛を受けるでしょう。慰謝料が高額になります。

詐欺が悪質、被害金額が大きい

詐欺が悪質であったり被害金額が大きかったりすると、精神的苦痛が大きくなるので慰謝料は高額になります。「お金をだまし取られて逃げられた」場合には、相手に誠実さのかけらも無く、明らかに悪質といえるでしょう。

結婚の準備が進んでいた

結婚式の準備をして友人に招待状を送り、結納や指輪の交換も行うなど、結婚の準備を進めれば進めるほど当時者の期待は高まるものです。結婚の準備が随分進んだ段階で破棄されたら慰謝料は高額になります。

被害者が精神病になった、退職した

結婚詐欺被害に遭ったことによって被害者がうつ病にかかったり、結婚を前提として退職してしまったりしたら、被害者が受ける影響は大きくなります。こういった事情がある場合にも慰謝料は高額になると考えましょう。

結婚詐欺で必要な証拠と集め方

結婚詐欺被害に遭ったとき、慰謝料請求するには証拠が必要です。
以下で集めるべき証拠の種類や収集方法をご紹介します。

婚約成立を証明する証拠

婚約成立を証明する証拠

まずは「婚約成立」を証明しなければなりません。
以下のようなものを集めましょう。

  • LINEやメールなどで「結婚しよう」と相手が告げている文面
  • 婚約指輪、結婚指輪の領収証や現物
  • 結婚式場とのやり取りの記録、申込書の控え、振込証の控えなど
  • 結納式や両親との顔合わせで撮影した写真
  • 結納式や両親との顔合わせの際に支払ったレストランの領収証など

正当な理由なく破棄されたことを証明する証拠

正当な理由なく破棄されたことを証明する証拠

次に、婚約が正当な理由なく破棄されたことを証明する証拠が必要です。

  • LINEやメールなどでこちらが連絡しているのに返信がないことがわかる画面
  • 相手が別れを通知してきたLINEやメール、手紙など
  • 相手の言葉の録音
  • 相手の言っていた氏名や住所が嘘であることがわかる資料(住所に該当がないことがわかる探偵の調査報告書など)

だまされたことを証明する証拠

結婚詐欺が成立するには、加害者が被害者を「だました」ことが必要です。
具体的には以下のようなものを集めましょう。

  • 相手が「お金に困っている」と告げているLINEやメール、音声録音など
  • 相手の説明が嘘であることがわかる資料
    (会社が存在しない、相手の氏名や住所が嘘、相手の親族関係が嘘であることがわかるものなど)

お金を渡したことを証明する証拠

お金を渡したことを証明する証拠

詐欺が成立するには、相手に「お金を渡した証拠」も必要です。以下のようなものを集めましょう。

  • 振込証
  • 領収証
  • 出金したことがわかる銀行通帳
  • 契約書(借用証)
  • 念書
  • 手帳の記録
  • メールやLINEでお金の受け渡しがあったとわかる資料

被害の大きさを示す証拠

以下のような証拠があると、大きな精神的苦痛を受けたことがわかるので慰謝料を増額しやすくなります。

  •  うつ病などの診断書
  •  退職したことがわかる資料(会社とのやりとり、退職届の写し、同僚からの祝福メッセージなど)
  •  妊娠したことがわかる資料(診断書やエコー写真、診療報酬明細所、中絶したことがわかる資料など)

結婚詐欺の証拠集めを探偵事務所に依頼するメリット

結婚詐欺に遭った場合、相手の素性や居場所がわからなくなるケースが少なくありません。
相手から聞いていた電話番号がつながらなくなったり、相手が引っ越していなくなったり、親族関係や勤務先が嘘だったり、場合によっては氏名すらも嘘だったりするでしょう。

そんなとき、個人で相手の素性や居場所を調べるのは極めて困難です。警察に相談しても、どこまで動いてくれるかは不透明。

困ったときには探偵事務所に依頼すれば、相手の居場所や氏名などを突き止められる可能性があります。結婚詐欺に遭って証拠集めに困ったときには、ぜひとも一度探偵事務所に相談してみてください。

参考:さくら幸子探偵事務所の結婚調査ページ

結婚詐欺は犯罪になる?

結婚詐欺は「詐欺罪」という犯罪になる可能性があります(刑法246条)。
お金をだまし取られたら詐欺罪が成立しますし、途中で気づいてお金を渡さなかった場合でも「詐欺未遂罪」が成立します。

参考:e-GOV法令検索 刑法 第二百四十六条

詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役刑」であり、非常に重くなっています。
相手を許せないならば、警察へ行って告訴しましょう。捜査を進めて相手を逮捕してもらえる可能性があります。

ただし相手が逮捕されて刑罰を受けても、慰謝料や被害金を返還してもらえるとは限りません。
刑事手続と民事賠償は別個に進めていかねばならないので、注意しましょう。

結婚詐欺で慰謝料を請求する手順

結婚詐欺で慰謝料を請求する手順

結婚詐欺の慰謝料を請求するときの一般的な流れは以下のようなものとなります。

相手の居場所や素性を突き止める

慰謝料請求するには、相手の居場所や素性が明らかでなければなりません。
どこの誰かわからない人には慰謝料を請求できないのです。

相手と連絡がとれない場合には、まずは相手の氏名や住所を突き止めましょう。
携帯電話番号がわかれば、氏名や住所を調べられる可能性があります。困ったときには弁護士や探偵事務所に相談してみてください。

内容証明郵便で請求書を送る

相手の居場所や素性がわかったら、内容証明郵便を使って慰謝料や被害金返還の請求書を送りましょう。
内容証明郵便を利用すると、相手に請求した証拠が残りますし強いプレッシャーを与える効果もあります。自分で請求するのに不安を感じる方は、弁護士に対応を任せるようお勧めします。

示談交渉をする

相手に請求書が到達したら、金銭賠償に関する話し合いをしましょう。
いくらをいつまでに返還してもらえるのか、話し合って決める必要があります。

和解書を作成して支払いを受ける

合意に達したら、慰謝料支払いに関する和解書を作成しましょう。
和解書には示談金の金額や支払方法、支払期限などの情報を記入します。

また可能であれば、和解書を「公正証書」にするようお勧めします。公正証書を作成すると、相手が将来約束を破って支払をしなかったときに相手の資産や給料などを差し押さえて回収できるからです。

万一の場合に備えて、相手の勤務先や預貯金口座のある銀行口座なども聞いておくとよいでしょう。

裁判を起こす

相手が不誠実で交渉に応じない場合や、話し合っても合意できない場合には訴訟(裁判)で解決するしかありません。慰謝料請求訴訟や不当利得返還請求訴訟を起こして、相手の責任を追及しましょう。婚約破棄や結婚詐欺を立証できれば、裁判所が相手に支払い命令を出してくれます。相手が判決に従わない場合には、差押も可能です。

ただし素人が1人で訴訟を起こすのは極めて困難となるでしょう。訴訟を起こすなら弁護士に相談するようお勧めします。

結婚詐欺に遭った場合の相談先

結婚詐欺に遭ったとき、相談できる場所は主に以下の3種類です。

弁護士

弁護士には証拠集めや慰謝料・被害金の請求方法などについてアドバイスしてもらえます。相手に対する請求手続きも依頼できるので、被害者にとっては心強い味方となるでしょう。
詐欺被害対応に力を入れている弁護士にコンタクトをとってみてください。

警察

詐欺罪が成立する場合には、警察に相談しましょう。ただし警察は「犯罪」が成立する場合にしか動かないので、お金をとられていない場合には対応してもらえません。
また証拠がないと動いてくれないのが通常です。
しっかり詐欺の証拠を揃えてから相談にいくとよいでしょう。

探偵事務所

相手の素性や住所などの情報が不足している場合には、まず探偵事務所に相談しましょう。
探偵事務所はさまざまな調査手法をこらして相手の居場所を突き止めたり、結婚詐欺の証拠を集めたりできる専門機関です。

まとめ

結婚詐欺に遭ったときには、慰謝料や被害金の返還を請求しましょう。
泣き寝入りする必要はありません。相手と連絡がとれなくなって困ったときには、まずは探偵事務所に相談してみてください。