別居婚は浮気されやすい?離婚リスクや慰謝料について徹底解説

最近「別居婚」を選択するカップルが増加しています。別居婚とは婚姻届を提出して籍を入れても同居せず、これまで通りに別居を続ける結婚の形態です。

確かに別居婚を継続すると、お互いに新鮮な気持ちを維持できますし、生活ペースも守れるメリットがあるでしょう。

ただし相手に浮気されても気づきにくく、離婚リスクが高くなるとも考えられます。

今回は別居婚で浮気されやすい理由、慰謝料請求できる条件や相場を解説しますので、別居婚を選択しようか迷っている方や別居婚の相手の怪しい行動が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること
  • 別居婚を選択できる条件とメリット・デメリット
  • 別居婚中に浮気で慰謝料請求をできる条件とできないケース
  • 別居婚で離婚する際の注意点

別居婚とは

別居婚とは、婚姻届を提出して「夫婦」になった後も別居したまま生活を続ける婚姻形態です。

一般に別居といえば夫婦が不仲なイメージですが、別居婚の場合には夫婦関係は円満です。あえて別居状態を継続し「恋人同士のような感覚を維持したい」「お互いの生活ペースを変えたくない」といった要望を実現するために多くの方が別居婚を選択しています。

しかし民法では、夫婦に「同居義務」を課していますが、別居婚を選択したからといって違法ではありませんし罰則などのペナルティもありません。

ただし、夫婦の双方が別居に納得している必要があります。片方が同居を希望しているのに、他方が一方的に別居婚を強行して同居を拒むと「同居義務違反」となり、慰謝料が発生する可能性があります。

別居婚を選択できる条件

  • 夫婦関係が円満である
  • お互いが別居婚に納得している

別居婚のメリット

別居婚には以下のようなメリットがあります。

自分のペースで生活できる

別居婚では相手と一緒に生活しないので、干渉されず相手に合わせる必要もありません。独身のときのように自由な生活を維持できます。

新鮮な気持ちを維持できる

同居すると相手と日常的に顔を合わせるので、どうしても慣れてお互いにぞんざいな態度になってしまいがちです。

別居婚であれば週末しか会えないなどの状態が継続するので、相手に対する新鮮な気持ちを維持しやすくなるメリットがあるでしょう。

別居婚のデメリット

別居婚には以下のようなデメリットもあります。

すれ違いが生じやすい

別居婚の場合、生活リズムだけではなく生活場所も異なりますし、週に1回かそれ以下しか会えないカップルも少なくありません。

いつしかお互いがすれ違うようになり夫婦関係が冷めてしまうケースが多々あります。

浮気されても気づきにくい

同居していると、深夜に家を出ていったり外泊が続いたりすると「浮気しているのでは?」と異変に気づくものです。

しかし別居婚の場合、相手が平日何をしているかがまったくわかりません。浮気されても気づきにくいデメリットがあります。

生活費が二重にかかる

別居していると、夫婦それぞれについて住居費や光熱費等の費用がかかります。生活費がかさむこともデメリットといえるでしょう。

別居婚で離婚した事例

田島さん(30歳 女性)のケース

田島さんは、28歳のときに3年間交際してきた彼(当時30歳)と結婚することになりました。

お互い仕事もしており居住していた県も違っていたので、話し合って別居婚を選択しました。

約束ごととして「週末はどうしても外せない予定がない限り必ず会うこと」「毎日電話、LINE、メールなどで何らかの連絡をとりあうこと」を取り決めました。

最初はうまくいっていたのですが、だんだん夫からのLINEの返信が遅くなり、ときには翌日になることも増えました。

週末は必ず会う約束だったのに「どうしても外せない仕事がある」といわれて会えない週も重なっていきました。

田島さんがおかしいと思って探偵事務所をつけて調べると、夫は若い女性と浮気している事実が発覚。

裏切りによって大きく傷ついた田島さんは夫との離婚を決意しました。

夫と浮気相手の女性に慰謝料を請求しましたが、婚姻期間も短く子どももいないうえ、「別居婚を選択したあなたにも浮気された責任がある」などと反論され30万円しか払ってもらえませんでした。

別居していたので財産分与対象となる資産もなく、30歳にしてバツイチとなり自分1人で新たな人生を踏み出す結果になりました。

ときおり「もしも同居婚を選択していたら浮気されなかったのだろうか」と考えてしまう日々を送っています。

別居婚で浮気されやすい理由

実際に別居婚から浮気が発覚し、離婚した事例を見ていきましたが、それではなぜ別居婚を選択すると、浮気のリスクが高まってしまうのでしょうか?

相手に対する気持ちが冷めやすい

別居していると、同居婚に比べて「家族」としての親密な感情が生まれにくくなります。

いつしか気持ちが冷めてしまい、近くにいる別の異性へと気持ちが移ってしまうケースが少なくありません。

浮気を相手に知られにくい

同居していると不自然な行動から簡単に浮気がバレるので、多くの方が不倫に躊躇します。

しかし別居婚の場合、どんな行動をしても相手に知られる可能性はほとんどありません。

ふとしたきっかけで歯止めがきかなくなり、浮気に走ってしまいがちです。

寂しさから浮気してしまう

別居婚をしていると自由な反面、寂しさを感じるタイミングがあるものです。

日常的に接する職場の異性や出会い系アプリなどで出会った異性などと、不倫関係になってしまう方が少なくありません。


こうして別居婚の浮気をされやすい理由を見ていくと、別々に暮らすことはメリットもある反面、様々な浮気のリスクがあることを再認識することができます。

別居中の浮気で慰謝料請求できる条件

別居婚では相手に浮気されても、慰謝料を払ってもらえるとは限りません。慰謝料請求するには以下の条件を満たす必要があります。

肉体関係をもっている証拠がある

1つ目に、配偶者と浮気相手に「肉体関係」が必要です。

民法において離婚原因とされる違法行為は「不貞」ですが、「不貞」というためには「男女の性関係」を要すると考えられています。(参照:民法770条1項1号法令検索より)

別居婚の配偶者が仲良く別の異性と交際していても、肉体関係がなくプラトニックな関係であれば慰謝料は発生しません。

また実際には男女の関係を持っていたとしても、証拠がなければ慰謝料請求はできないため、慰謝料請求のためには肉体関係があることと、その証拠を押さえることはセットだと考えておきましょう。

婚姻関係が破綻していない

浮気で慰謝料請求するには「夫婦の婚姻関係が破綻していない」ことが必要です。

すでに夫婦関係が破綻している場合、不倫されても「精神的苦痛」が発生しないと考えられるからです。

たとえば別居してお互いに完全に夫婦としての気持ちが冷めており、「形だけの夫婦」になっていたら、相手が浮気しても慰謝料請求できません。

別居婚の場合、「円満でも別居している」ので「別居している」事情のみで慰謝料が否定されるわけではありません。

ただ相手からは「すでに婚姻関係が破綻していた」と反論される可能性が高くなるでしょう。

「婚姻関係が破綻していない」具体例

  • 結婚当初からお互いの了承のもとに別居婚を選択し、週末は会ったりLINEやメールで連絡をとりあったりしていた
  • 単身赴任が理由で別居していた
  • 親の介護のために別居していた
  • 里帰り出産のために別居していた

こういった状況であれば「婚姻関係は破綻していない」ので慰謝料請求を行えます。

時効が成立していない

慰謝料請求するには「慰謝料請求権の時効が成立していないこと」が必要です。

慰謝料請求権は「不倫と不倫相手を知ってから3年」で時効となります。また「不倫が行われてから20年」が経過したときにも除斥期間によって権利が消滅します。

相手が不倫したことを知ってから3年以上放置していると、慰謝料請求できなくなる可能性が高いので、請求したいなら早めに行動しましょう。


別居婚でも慰謝料請求ができる条件を見ていくと、一般の浮気と同じ部分も多い反面、「婚姻関係の破綻」については同居婚よりも証明が難しいという点があります。

以下の記事では、別居中の浮気でも慰謝料請求ができる条件だけでなく、別居中の慰謝料の相場、慰謝料請求の手順なども詳しく解説しているため併せて読んでおきましょう。

浮気されても慰謝料請求できないケース

以下のような場合、別居婚の配偶者に浮気されても慰謝料を請求するのは難しくなります。

不倫が開始したときすでに婚姻関係が破綻していた

別居婚を継続していると、お互いに相手に対する気持ちが冷めて夫婦としての実体がなくなってしまうケースがあります。その後に相手が浮気しても慰謝料は請求できません。

婚姻関係が破綻している具体例

  • 別居婚が長くなってお互いに気持ちが離れ、まったく会わずメールなどでも連絡をとらない期間が数年以上になっていた
  • すでに離婚協議や調停などの手続きを始めていた

上記のような状態で浮気されても慰謝料は請求できません。これはすでに婚姻関係が破綻しているのであれば、浮気の事実があったとしても精神的苦痛を受けないと考えられるためです。

肉体関係がない、証明できない

配偶者と浮気相手の間に肉体関係がない場合、あるいは証拠がなくて性関係を証明できない場合、慰謝料請求は難しくなります。

時効が成立した

不倫相手に対する慰謝料請求権の時効は「不倫相手と不倫の事実を知ってから3年間」です。3年以上放置していたら慰謝料請求はできなくなります。

ただし配偶者に対する「離婚慰謝料」の請求権は「離婚後3年間」なので、不倫の発覚後3年が経過しても配偶者に対しては慰謝料請求できる可能性があります。

別居婚の浮気慰謝料の相場

配偶者に不倫されたときの慰謝料額は「夫婦が離婚する」か「夫婦関係を修復する」かで大きく異なります。

離婚する場合には精神的苦痛が大きくなるので慰謝料額が上がりますが、修復する場合には低額になります。それでは、別居婚の配偶者に浮気されたとき、慰謝料の金額はどのくらいになるのでしょうか?相場をみてみましょう。

離婚する場合

離婚する場合の慰謝料額の相場は100~300万円程度です。

離婚しない場合

離婚しない場合の慰謝料額の相場は100万円以下になります。

別居婚の場合、慰謝料が減額される可能性がある

別居婚の場合、慰謝料が認められるとしても同居婚に比べて減額される可能性があります。

これは相手から「別居した時点で夫婦関係が相当悪化していた」と主張されるケースが多いからです。「自分は同居を希望したけれど、拒否された」といわれるケースもあるでしょう。

不倫された原因について「こちらにも非がある」と判断されたら慰謝料は減額されてしまいます。

こうした点を踏まえて、別居婚を選択するときには「お互いが納得して別居する」ことについて、書面を残しておくべきです。

慰謝料が増額される場合

慰謝料が増額される理由として以下のような事情があります。

  • 相手が反省していない
  • 夫婦関係が円満な状態で不倫された
  • 未成年の子どもがいる、人数が多い
  • 被害者がうつ病になった
  • 不倫の期間が長い
  • もともと生活費をもらっていたが、不倫が始まって送金してもらえなくなった

慰謝料が減額される場合

以下のような事情があると不倫慰謝料は減額されます。

  • もともと夫婦関係が悪化していた
  • 不倫の回数が少ない
  • 不倫関係の期間が短い

浮気が発覚したら離婚すべき?3つの判断基準

別居婚の配偶者が浮気したら離婚すべきなのでしょうか?悩んでいる場合は、以下のことを自分に問いかけてみましょう。

生活できるのか

まずは相手と離婚しても生活していけるかどうかが問題です。

もともとお互いに収入があって家計が独立しているなら、経済的な問題はほとんどないでしょう。

一方、相手から送金してもらって生活していた方の場合、離婚すると生活費は払ってもらえなくなります。

生活の基盤が乏しければ、離婚に踏み切ることも難しくなります。仕事をする、実家に戻る、行政からの給付を受けるなど何らかの計画をもって離婚しましょう。

小さな子どもがいないか

子どもがいるかいないかも重要です。

両親が円満な関係であれば、子どもも「父と母は両方とも自分を見守ってくれている」と感じ安心できます。しかし離婚してしまったら、子どもが「相手から見捨てられた」と感じる可能性があります。

ただ「子どもがいると離婚してはいけない」といっているのではありません。

きちんと養育費を払ってもらい面会交流を継続すれば、子どもにもさみしい思いをさせずに済むケースもたくさんあります。

状況に応じた判断を要するので、迷ったら弁護士や離婚カウンセラーへ相談してみてください。

修復の可能性はないか

修復の可能性が本当にないのかもよく考えてみましょう。

たとえば相手が「寂しさ」からついつい浮気してしまった場合、これを機に「同居婚」に切り替えてやり直すのも一つの解決方法となりえます。

同居すればお互いに家族としての愛情が生まれ、より深い関係となっていける可能性があります。

別居婚で離婚する場合の注意点

別居婚の夫婦が離婚する場合、以下のようなポイントに注意が必要です。

証拠集めが難しい

同居している場合、浮気の証拠を集めるのは比較的簡単です。

  • 相手のスマホや使用しているPCのデータをチェック
  • 相手の行動を予測してあとをつける
  • 自宅に届いたクレジットカードの明細書をチェック
  • 相手のスケジュール帳や日記をチェック
  • 相手の所持品をチェック
  • 相手の普段の言動から怪しい点を把握する

しかし別居状態ではほぼ不可能なことばかりでしょう。

証拠を集められないために慰謝料請求が難しくなり「単に籍を抜くだけの離婚(金銭請求できない離婚)」になってしまう可能性もあります。

以下の記事では、別居中の浮気の証拠の集め方について詳しく解説しています。別居婚のため浮気の証拠がない…と悩んでいる場合は合わせて読んでおきましょう。

財産分与

別居婚の離婚では、財産分与にも注意が必要です。

財産分与の対象になるのは「夫婦が婚姻中に協力して積み立てた共有財産」です。

共有財産となるのは基本的に「夫婦の家計が1つ」の状態で形成したものであり「別居して家計が別々になった後に得た財産」は対象外と考えられています。

別居婚の場合、お互いの家計が独立しているケースが多いでしょう。それであれば、すべて特有財産となって「財産分与対象資産はない」と判断される可能性があります。

つまり、同居婚のケースと異なり、別居婚では財産分与請求は困難になりやすいといえるでしょう。

ただし別居婚でもどちらか一方が相手からの送金によって生活しているなど、家計が1つであれば、積み立てた資産は財産分与対象となる可能性があります。

婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦がお互いに負担すべき生活費です。

もともと同居していた夫婦が離婚する場合、収入の少ない側は多い側(一家の大黒柱)へ婚姻費用を請求できます。

別居婚の場合、はじめからお互いの家計が独立しており相手の収入に頼っていない方が多いので、お互いに婚姻費用を請求できない可能性が高くなります。

親権

別居婚の夫婦に未成年の子どもがいる場合、親権の決定方法に注意が必要です。

離婚後、子どもの親権になれるのは父親か母親のどちらか一方のみです。離婚時にどちらが親権者になるか決めなければなりません。

別居婚の場合、子どもは親のどちらか一方と生活しているはずです。

その場合、離婚後も「子どもと同居している親」にそのまま親権が認められる可能性が高くなります。たとえば母親が子どもを育てている場合、そのまま母親が親権者になるケースが多数です。

年金分割は可能

別居婚の場合、財産分与や婚姻費用の請求は難しくなる可能性がありますが、年金分割は同居婚のケースと同じようにできます。

年金分割は「夫婦のどちらかまたは双方が厚生年金に加入」していれば適用できる制度であり、同居か別居かは関係ありません。

別居婚で浮気されたら浮気調査が必須

同居婚であれば、相手が浮気したときに自分でもスマホを調べたりしてある程度まで、証拠を集めることも可能です。

しかし別居婚の場合、スマホも日記帳もクレジットカードや交通ICカードの明細書も確認できず、証拠集めは極めて困難となるでしょう。こうしたことから浮気の証拠集めは、プロである探偵事務所に任せる必要があります。

もしも別居婚の配偶者に浮気の疑いがあるなら、早めに探偵事務所に相談して浮気の証拠を入手しましょう。

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まとめ

別居婚にはメリットもありますが、配偶者に浮気されるリスクが高くなる点が問題です。またそうしたリスクだけでなく、実際に慰謝料請求や財産分与などについても、同居婚とは異なる判断をされがちです。

夫婦の形は人それぞれではありますが、別居婚を選択する場合は、双方がメリットだけでなく、こうしたリスクがあることも知ったうえで選択する必要があります。

またもし別居婚をしている中で、相手に対して不倫の疑念を持ってしまったら、別居婚の場合は自分で証拠を見つけることは困難なため、早めにプロに相談することも検討してみましょう。