職場とは仕事を行い、対価として報酬を得る場所です。しかしそんな場所であっても、仲間意識や上司と部下という上下関係から、次第にお互いの好意が高まり、恋愛関係に発展することは珍しくありません。
今回はそんな職場での悩みの種になる、職場恋愛や社内不倫について、なぜ社内不倫は起きてしまうのか?また社内不倫や職場恋愛が周囲にバレるきっかけとは?そして社内不倫が、本人たちや会社に、どんな悪影響を与えてしまうのか?社内不倫が起きる仕組みから、実際に会社が行う可能性のある制裁までくわしく解説していきます。
会社にとって労働力は大切な資産であり、社員にとって給与は生活の糧となるものです。だからこそ双方の関係を壊す可能性のある不貞行為には、本人たちにとってどんなリスクがあり、会社がなぜ社内不倫を嫌うのかを、この記事を通して知っていきましょう。
目次
社内不倫・職場恋愛が多いって本当なの?
さて社内不倫や職場恋愛について語る前に、職場で恋愛関係に発展することが多いというのは本当なのでしょうか?
20代~60代の14,100名に「浮気や不倫相手と、どこでどんなきっかけで出会いましたか?」というアンケートを取ってみると、「同じ会社」が22.9%、次いで「友人」が14.7%、「友人の紹介」が11.8%と、不倫や浮気相手との出会いは職場が一番多いという結果になりました。(参照:2018年の相模ゴム株式会社のアンケートより)
またこの他にも、大手掲示板Yahoo!知恵袋で「出会った場所+不倫」というキーワードで検索し、一般の人の悩みを覗いてみると、2022年1月時点で、
- 職場 不倫 31,788件
- 友人 不倫 25,466件
- 同級生 不倫 3,432件
- SNS 不倫 3,613件
と、他の浮気・不倫の出会い方に比べて、圧倒的に職場での不倫について悩んでいる人が多いという結果になりました。
このように実際のアンケート結果や、大手掲示板の書き込みをみても、会社は不倫相手と出会う場所として非常に大きな割合を占めているということを読み解くことができます。
会社で職場恋愛・社内不倫が起きる5つの理由

職場での恋愛や不倫が多いということが、実際のデータからわかったところで、それではなぜ、罪の意識を抱きながらも職場という公的な場で、禁断の関係へ発展するのでしょうか?
理由①:同じ目標に向かうことで、仲間意識が生まれるから
まず最初の理由として考えられるのが仲間意識です。 家族や恋人と過ごす時間より、職場にいる時間の方が長いという方が多いのではないでしょうか?
長い時間を共有する同僚・部下・上司。毎日顔を合わせることで『単純接触の原理』が働き、親近感が増します。 また、ひとつの目標に向かって一緒に協力し、励まし合い、成し遂げたときの達成感を共有できることが、恋愛関係に発展しやすい理由の一つです。
結婚式などで「夫婦はじめての共同作業」なんて言葉を耳にしますが、共同作業で生まれる『強い絆』は、時として禁断の関係まで招いてしまうこともあるのです。
理由②:トラブル・ストレスを共有しているから
人間とは不思議なもので、楽しい時間や好みを共有している瞬間よりも、トラブル・ストレスを共有でき、かつ共感できる方が相手に好意を抱きやすいのです。
- 妻に仕事の愚痴を漏らしたのに聞いてもらえなかった
- 夫に子育てのストレスを伝えたのに、理解してもらえなかった
こんな経験をしたことはありませんか?その点、職場仲間は仕事のトラブルやストレスを共有できる良き理解者。良いことだけでなく、悪いことにだってともに立ち向かえます。 嫌いな上司へのストレス・予期せぬトラブルといった『共通の敵』をもっているからこそ、芽生える絆があるのです。
理由③:良いところばかりフォーカスされているから
職場は日常生活より、努力や成果を視覚的に評価されます。そのうえ仕事中は、誰しも自分の欠点を隠しがちです。たとえば、
- 日常生活では口うるさいけれど、仕事になると欠点を指摘できる人に見える
- 自分中心で行動したいタイプだけど、チームの中ではリーダー的存在
というように、長所と欠点は表裏一体なのですが、仕事上では相手の表向きな部分だけが目に留まり、簡単に好意を抱きやすいのです。
理由④:夫や妻に言い訳ができる
職場の同僚・上司・部下と不倫関係に発展してしまっても、同じ仕事をしている者同士だからこそ、時間に都合がつけやすかったり、夫や妻に言い訳をしやすかったりします。
不倫相手と一緒にいるとき、夫や妻に「誰といるの?」と尋ねられても「職場の人と…」といえば、嘘ではありません。
このように、たとえ男女の関係に発展したとしても、そもそも一緒にいることが多かったり、一緒にいることが不自然に見えないところが、社内不倫が起きやすい理由の一つとなっているのです。
理由⑤:男女関係に発展する「きっかけ」が多い
誰かへ好意を抱いていたとしても、きっかけがなければ恋愛関係に発展することはありません。これはどんなシチュエーションでも同じです。 しかし、社内不倫の場合、好意から恋愛感情へ発展するきっかけが圧倒的に多いのです。例えば、
- 一緒に出張へ行くことになった
- 忘年会、新年会といった飲み会
- 残業などで2人きりになった
仕事という慣れた環境に、業務中だという安心感、そして家族の目が届かないため、相手との距離もグッと縮まりやすいのです。
社内不倫が与える立場ごとのリスクとは?
職場という環境が、上司部下や同僚といった関係から男女の関係に発展しやすい理由が分かったところで、それでは社内不倫が与えるリスクを立場ごとに見ていきましょう。
不倫した側に考えられる社内不倫のリスク
社内不倫においてもし自分に配偶者がいる場合は、以下のリスクが考えられます。
- 離婚のリスク
- 慰謝料請求のリスク
- 養育費支払いのリスク
- 降格・減給・異動など社内での処分のリスク
社内不倫が自分の配偶者にバレてしまった場合は、不倫相手と共に配偶者から離婚や慰謝料の請求をされる可能性があります。
また子供がいる場合は、養育費も支払うこととなり年収600万円ほどの場合0歳~14歳未満であれば一人あたり月額4万~6万と、非常に大きな金銭的負担が発生する可能性があります。
また社内不倫ということで、不適切な関係が会社にバレてしまった場合は、自分が上司なら監督責任を追及され、移動や降格・減給といった処分も考えられます。
独身だった側に考えられる社内不倫のリスク
自分が独身で関係を持ってしまった相手が、既婚だった場合は社内不倫をすることで以下のリスクが考えられます。
- 慰謝料請求のリスク
- 降格・減給・異動など社内での処分のリスク
- 婚期が遅れるリスク
自分が独身にも関わらず、相手が既婚の場合は既婚だった場合と同様に相手の配偶者から慰謝料請求を受ける可能性や、会社に不倫関係がバレてしまった場合は部署異動を含めた何らかの処分が下る可能性があります。
また独身側にだけ言えることですが、この社内不倫の関係が終わってしまった場合、その後の婚期が遅れ、結果的に自分の家庭を築くことができないといった、その後の将来を大きく左右するリスクがあります。
このように社内不倫について、対象ごとにリスクを考えていくと、会社にとっても本人たちにとっても、社内不倫を行うメリットは一時的な快楽だけで、多大なリスクだけがついて回る関係だということに気づくことができるはずです。
社内不倫・職場恋愛がバレる6つのきっかけ
職場は恋愛感情が発展しやすい環境であること、社内不倫がバレた場合は双方が大きなダメージを負うことが分かったところで、社内不倫がバレるきっかけにはどんなものがあるのでしょうか?
- 普段の会話や仕草の親密感
- 会社の上司・同僚・部下へのろけや相談
- LINEやメールの誤送信やポップ通知
- SNSへの投稿
- 社外での親密な様子の発見
- 有給などやシフトの不自然な重なり
社内不倫がバレる一番の大きな原因として、普段の会社内での会話や距離の近さというものがあります。同じ職場で長い時間共に働いているからこそ、不倫の事実を隠していてもちょっとした距離感の違いは、敏感に感じ取れてしまうものです。
また社内不倫をしている人に限らず、恋愛でウキウキした気持ちを誰かに共有したい!聞いて欲しい!と感じて、相手については隠していても「好きな人ができて、今いい感じなんだ!」といった何気ない会話の中や、SNSの匂わせな投稿が原因で不倫がバレてしまう場合もあります。
他にも有給やシフトの不自然な重なりや、職場以外でのデートを直接見てしまうなど、実は社内不倫がバレてしまう可能性はそこかしこにあります。
こうして一つずつ社内不倫や職場恋愛がバレるきっかけを見ていくと、社内不倫が起こる理由と同じように、同じ職場に長時間一緒にいるからこそ、同僚や上司たちは些細な変化に気づくことができるということが見えてきます。
そしてこういった点から、「自分たちの関係は、絶対にバレていないから大丈夫」「細心の注意を払っているから問題ない」といった考え方が、いかに危ないかということを客観的にみるきっかけになります。
以下の記事では社内不倫をしている人の特徴や、サインをまとめています。気になることがある場合は合わせて読んでみてください。
社内不倫がバレたらどうなる?具体的な処分を知ろう
さて、職場では恋愛感情が育ちやすいこと、そして毎日会社で長い時間を過ごすからこそバレるリスクが高いことが分かったところで、実際に社内不倫がバレてしまった場合どういった処分が考えられるのでしょうか?
以下は社内不倫がバレた時に下される可能性のある処分を、軽い順に示しています。
- 処分なし
- 口頭注意
- 部署移動・配置転換
- 減給(ただし最大で10%)
- 降格
- 出勤停止
- 退職勧奨(退職勧告)
- 懲戒免職(いわゆるクビ)
実は社内不倫に対して、どのような処分を下すかは会社によって大きく異なります。
これは、実際に業務に対して支障が出ていたとしても、会社の規模や状況から降格や配置転換が困難だったり、中には社内恋愛などについては会社が一切関知しないというドライな社風を持つ会社もあるためです。このため、もし社内不倫がバレたとしても特に会社から何もなく、あっても口頭での注意にとどまる会社もあります。
また支社などを持っている中規模程度の会社になれば、職場の風紀を考えてどちらか、または双方を部署移動や配置転換、また降格させることで社内を落ち着かせるといったことも考えられます。
減給処分は労働基準法により、最大で10%のカットしか認められていないため3か月の減給処分などが下ったとしても、実質的なダメージはそこまで高くはなりません。同じように出勤停止は、1週間~1ヶ月などそれほど長くなることはないため、こちらも実質的な金銭的ダメージは比較的少ないといえます。
ただ、出勤停止となれば社内で「なぜ、あの人は会社に来ないのか?」「どうして急に休んでいるのか?」といったことが噂される可能性があるため、その後復帰した際に会社内でどのような目で見られるかについては覚悟しておく必要があるかもしれません。
最後に退職勧奨や懲戒解雇についてですが、不倫はプライベートなことと判断されるため、実際には会社として積極的に重い処分を下すことは、逆に訴えられるリスクを伴うため行えないのが実情です。
以下の記事では、実際に懲戒解雇が妥当とされた事例と、不当とされ懲戒解雇が撤回された判例を紹介しています。どんな場合ならクビになるのかということを知りたい場合は合わせて読んでみてください。
社内不倫が会社に与える影響とは
基本的に社内不倫は、本人同士のプライベートなことのため現行の法律では会社が社内不倫に対して、厳しく処分できない現状があります。
しかしそれでは社内不倫が会社に与える影響は本当に少ないものなのでしょうか?ここからは社内不倫が会社に与える影響について考えてみましょう。
影響①:職場環境の悪化
社内不倫で最も懸念されるのが職場環境の悪化です。上司と部下が社内不倫を行っている場合、「あの子はいつも上司にひいきにされてずるい」「あいつは何でも許されて、なぜ俺たちがこんな目に」など恋愛感情から1人を特別視していると感じる場面は、その他の社員からすれば非常に面白くない状況です。
こうした状況が続いてしまえば、「こんな不条理な会社にとどまることはできない」と会社を去る人がでてきてしまったり、「一生懸命やるのは馬鹿らしい…」とやる気をなくし、生産性が著しく低下してしまう場合もあります。
こうなってしまえば会社としては、優秀な人材が会社から離れてしまったり、新しい求人を出す手間やお金もかかり、やる気をなくしてしまった社員へのケアなど多大な損害が出てしまいます。
影響②:会社への風評被害
社内不倫で2つ目に怖いのが会社に対しての風評被害です。さてもしあなたが以下のように聞かれたらどのように答えますか?「この会社は社内不倫を黙認しているようです。あなたはこの会社を信用できますか?」
「社内不倫を黙認している」、これ自体は社員のプライベートなことなので特に問題はないはずです。しかしもしこんな質問をされたら多くの人が「この会社は、臭い物に蓋をするような体質なのかもしれない…」「不適切なことがまかり通る社風なのかもしれない」など、会社に対してよくないイメージを抱く確率が高くなります。
このように一部の社員の不適切な行動が、会社全体のイメージを下げる結果に繋がる可能性があるのです。
影響③:セクハラ・ストーカー・傷害事件など民事・刑事事件への発展
また社内不倫は、本人たちだけの問題にとどまらず、交際が暗礁に乗り上げたり、配偶者にバレてしまえば、セクハラ問題やストーカー被害に発展したり、さらに悪化すれば傷害事件などの刑事事件へ発展するリスクも抱えています。
そもそも不倫自体が、双方の家族を巻き込む非常に危うい関係であり、また会社内で不倫をした場合、自らの意思で部署移動をするなど相手から遠ざかるのは難しいのが現状です。
そのため関係破綻後も互いに顔を合わせることになり、結果的に事件の引き金になってしまう場合があるのです。
このように具体的に社内不倫が会社に与える影響を見ていくと、いくら恋愛はプライベートなこととは言え、経営者として社内不倫を見過ごすわけにはいかないという事実を改めて知ることができます。
社内不倫をさせないために会社ができる3つの対策
社内不倫は職場内の空気を悪くしたり、優秀な社員の辞めるきっかけになるなど、会社としては見過ごせないことです。しかし会社では社内不倫が発覚しても、すぐに該当の社員をクビにしたり閑職に飛ばすということも、訴えられるリスクを伴うため慎重な判断が必要です。
それでは社内不倫をさせないために、会社としてできることはないのでしょうか?
対策①:就業規則についての条項の追加・確認
就業規則とはその会社で働く上で、雇われた側が守らなければならないルールです。この就業規則の中に「公序良俗に反した場合」や「社内風紀を乱した場合」といった条項が入っているかをまず確認しておきましょう。
ただもしこの条項が入っている場合でも、いきなり懲戒解雇という重い懲罰を与えることはできず、社員がとった行動に対して「相当な処分」を下さなければ無効になり逆に訴えられる可能性があります。
そのため、実際にどの程度の処分を下すかについては、社員が会社に与えた損害等を鑑みることが必要です。
対策②:社内通報制度を設ける
社内不倫をさせない抑止として、社内不倫について匿名で通報できる環境の整備も会社にできる対策の一つです。
こうした場所があるというだけで、社内不倫を行う側が「もし通報されたらどうしよう…」「誰かにバレてしまったら、昇進の道が閉ざされてしまうかも…」といった心理的要素が加わり、未然に社内不倫の芽を摘むことができます。
またもし実際に社内で不倫があった場合でも、自体が悪化する前にいち早く会社が事実を知ることができ、未然に予防するだけでなく早期発見にも役立てることができます。
対策③:適切な処分を下す
社内不倫を防ぐという意味では少し異なりますが、現在進行形で社内不倫が判明した場合は、黙認することなく適切な処分を下すことで風紀の乱れを整え、また新しい社内不倫の芽を摘み取ることができます。
例えばいきなり懲戒解雇や左遷といった重い処罰ではなく、配置転換したり、業務中に不適切な行動をしていた場合は、減給、降格、出勤停止といった会社に与えた損害を考え、重すぎない処罰を与えることが大切です。
黙認や口頭注意のみではなく、適切な処置を下すことで、真面目に働いている社員たちへの不満や疑念を晴らすことに繋がります。
こうして実際に会社で社内不倫に対してできることを見ていくと、あくまで不倫はプライベートなこととなるため、厳しい処分を与えることが難しく、会社側としては歯がゆい思いをする場面が多い現実を知ることができます。
だからこそ会社内で社内不倫をさせないためには「未然に防ぐ」ことや「不貞行為を行いにくいクリーンな環境を作ること」が一番の対策といえるでしょう。
まとめ
社会人にとって、多くの時間を過ごす会社という場所だからこそ、親愛から恋愛感情に発展するのはある意味自然なことです。
しかし、もし自分や相手が既婚者だった場合は、会社という閉鎖された空間で不適切な関係に陥るのは、通常の不倫よりさらにリスクが高いことを理解していなければいけません。
だからこそ社内不倫について、会社にどんな影響を与える可能性があるのか?そして自分たちがどんなリスクを背負うことになるのか?を改めてみていくと、会社がなぜ「社内不倫」を嫌うか?もしバレた場合はどうなるか?などを理解でき、背筋に一筋冷たいものが走るかもしれません。
「恋」する気持ちは誰もが持ってよい、大切な気持ちの機微の一つです。ただし大人になったからこそ、そして会社という給与を支払ってくれる場所だからこそ、日々の生活のために自分たちがどうあるべきかを今一度振り返ってみてください。